新国立競技場の場所(アクセス)、こけら落とし、収容人数、デザインとは?東京オリンピック

オリンピック

ようやく、2020東京オリンピックの開催まで約1年を切りました。

今回は、その東京オリンピックでメイン会場となる「新国立競技場」に関してアレコレと公開されている情報(場所やアクセス、こけら落とし、収容人数、デザインなど)を中心にまとめてみました。

そのため、新国立競技場について知りたい内容が網羅されるように構成しました。

知りたい内容の項目だけでも飛ばし読みしていただければ結構かと存じます。

新国立競技場の基本的データ

 

まず、新国立競技場に関するデータをまとめておくことにしましょう。

(1)新国立競技場の場所

言わずと知れた新国立競技場の所在地は、東京都新宿区から渋谷区に跨る広大な敷地になります。

住所は「東京都新宿区霞ヶ丘町10番1号」となっています。

アクセスには

①「JR中央・総武線千駄ヶ谷駅または信濃町駅」

②「都営地下鉄の国立競技場駅」

③「東京メトロ銀座線外苑前駅」が推奨されています。

(2)新国立競技場の規模

収容人員数でみれば、約6万8千人で8万人にも対応可能としています。

これに次ぐ競技場と言えば東京ドームの5万5千人規模になるので相当大きな規模と言うことが出来ます。

敷地面積は113千平方メートル、建築面積は72,400平方メートルとなっており地下2階、地上5階となっています。

(3)新国立競技場のこけら落とし

2019年10月現在計画されている「新国立競技場」における「こけら落とし」は、2020年1月1日に開催予定の「第99回天皇杯 JFA 全日本サッカー選手権大会」の決勝戦になっています。

天皇杯ですのでJ1リーグチームを筆頭に都道府県代表チームまでの勝ち上がり方式の決勝大会が新国立競技場で開催されるわけです。

新国立競技場が2020年オリンピックメイン会場になるまでの紆余曲折

現在、東京または近辺にお住いの方々は、建設中の新国立競技場を直接目にしてご存じの方々は多いと思います。

着々と工事が進められてその全容が外部からでも視認できるほどになっています。

この2020東京オリンピック大会が日本で開催が決定された時は、今から6年も前の2013年9月でIOC(国際オリンピック委員会:International Olympic Committee)で正式に決定しました。

それまでにも、前回大会2016年の開催候補選定の時についても日本は立候補していました。

しかし、結果としてブラジルのリオデジャネイロに敗れてしまったという経緯がありました。

つまり、2020年に開催される東京オリンピックは、2回目の挑戦でようやく勝ち取った国際的スポーツイベントであるわけです。

さて、オリンピック誘致については当然大会会場を含めた各種の要件をIOC委員会の各委員に理解を得て開催が適合するとの判断をもらわなければなりません。

今回、この稿のテーマである「新国立競技場」は前回立候補した時では、一会場であったのですが、今回の2020年東京大会ではメイン会場としての位置づけで立候補していました。

そこでは、既にオリンピックを開催するにあたってのメイン会場、つまり開会式、閉会式の実施会場として立候補案に盛り込まれていたわけです。

この時の計画では、建て替えを前提にしてはいるものの、どのような競技場になるのかデザインも施工する業者も何も決まっていなかったのには驚かされます。

2013年の最終決定に至るまでには、色々な方面での総額予算などの論議が行われていたわけですが、この時にはいわゆる机上の空論のままでしかなかったわけです。

次項以降今回のテーマである新国立競技場が決定されるまでの紆余曲折の一端をご紹介しましょう。

(1) 国立競技場の歴史的変遷

ここでは、理解を深めるためにこの新国立競技場の歴史を辿ってみたいと思います。

そもそもは、今から約百年前にまで遡ります。

1924年といいますから大正13年に「明治神宮外苑競技場」として開場したことに始まります。

したがって、第二次世界大戦以前に建築された競技場ということです。

この明治神宮外苑競技場が、いわゆる「神宮外苑」と呼ばれ親しまれるようになりました。

第二次世界大戦の戦時中の映像として記録映像にもよく出て来るものとして、大々的に行われた「学徒出陣式」を行ったのもこの競技場でした。

その後、第二次世界大戦に敗戦した日本においては、進駐軍が東京の主要建築物を接収し米軍管理下に置かれることになります。

その後、米軍(連合国軍最高司令官総司令部:GHQ:General Headquarters, the Supreme Commander for the Allied Powers)による管理が解除された後には、国立競技場は1956年(昭和31年)、当時の文部省(現「文部科学省」)の所管に移り、再び国営となりました。

この時には、1960年(昭和35年)に開催年を迎えるオリンピック大会の東京招致を踏まえて、国が「国際大会に相応しく誇れる競技場」を建設する目的をもって、翌年の1957年(昭和32年)に全面的な競技場建て替え工事が開始されました。

さらに約1年後の1958年(昭和33年)に、新たに「国立霞ヶ丘陸上競技場」として開場することになりました。

このころから、この競技場を公式に「国立競技場」と呼称するようになったということです。

開場した年である1958年には、「第三回アジア競技大会」の会場にもなりました。

その結果、1964年(昭和39年)に開催の夏季オリンピック大会が東京開催されるに至り、そのメイン会場として脚光を浴びることになりました。

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オリンピック大会が開催された後には、陸上競技、球技兼用の競技場として各種トラック競技を含む陸上競技やサッカー、ラグビー等の球技大会が開催されました。

無論、日本で開催される各種の国際大会も同所で開催されたりしていました。

しかし、これだけの収容人数を持つ競技場ですので、一般的にはコンサートイベントなどを行うことがありますが、この国立競技場では、周辺地域への騒音問題のため年に1回の開催に制限されてしまっているようです。

(2) 新たな段階を迎える国立競技場

国立競技場として2000年代に入り、その老朽化が騒がれ始めました。

それと同時並行的に2008年には2016年における夏季オリンピック大会招致への動きが目立ち始めました。

この時には、国立競技場は前回の東京オリンピック(1964年)開催時にメイン会場として活躍はしたものの、新鮮さが無いことや老朽化が激しいという理由で、サッカー競技のみの一会場としての位置づけで臨みました。

この時、つまり2016年オリンピック開催に向けた招致委員会では、東京都中央区の晴海埠頭に「新オリンピックスタジアム」を建設し、その会場をメイン会場とするという内容で招致活動にアプローチしていました。

これは、政府や文部科学省も研究調査委員会を組織して考案された内容でした。

しかし、ご存じのように2016年の夏季オリンピック大会はブラジルのリオデジャネイロに決定してしまい、メイン会場の晴海埠頭立地もうやむやに消えてしまう結果になりました。

しかしその後、2011年(平成23年)に、再び2020年夏季オリンピック大会の東京誘致活動が始まり、俄かに国立競技場が注目されるに至ります。

この間、少し説明が要ります。

2016年の夏季オリンピック大会にリオデジャネイロが開催地として決定した候補地決定戦でも東京も有力候補でした。

その時に招致活動の中心にいたのが、石原慎太郎都知事でした。

そして、2020年の夏季オリンピック大会招致活動の機運を盛り上げたのも同じ石原慎太郎都知事だったのです。

いわゆる、「捲土重来(けんどちょうらい)」となる石原氏にとって、2回目の挑戦となる招致合戦では失敗できなと言う覚悟で、1回目の立候補時とは大きく趣を変えて、「既存施設の活用」をテーマにすることで、少ない費用で、最大の効果を上げ、自然にも配慮した大会運営を目指すとしたわけです。

このため、国立競技場が注目され始めたと言って良いでしょう。

そのため、招致運動が始まった2011年の翌2012年(平成24年)には、国が1億円の予算を配分し国立競技場の改修計画としての調査費を計上しました。

この時には文部科学省の「スポーツ・青少年局」が担当部署として中心になり、日本スポーツ振興財団(JSC:Japan Sports Council)と協議しつつ進めることになりました。

さて、ここからが国立競技場を巡り様々な計画、構想が持ち上がり始めるわけです。

つまり、国の予算のついたイベントだけにこの年に、代表的なものでは政権与党である「自民党スポーツ立国調査会」が以下の構想を基に全面建て替え工事を提案しました。

① 8万人規模の観客を動員できるスタンドの整備

② 全天候型ドーム構想を視野に入れた構想を検討する。

更に、日本スポーツ振興財団(JSC)からは、改修工事という名目の下、世界一の競技場を建設したいという公表がなされ、この時期から国立競技場がいわゆるレガシー(未来への遺産)とする構想が次々に出始めました。

結果、同年2012年7月には「新国立競技場基本構想国際デザインコンクール」の開催が決定され、以下の条件に見合う案を募集することになりました。

① 2019年9月のラグビーW杯の会場使用に間に合うこと。

② 収容観客動員数が8万人以上になるっ設計であること。

③ 全天候型の開閉式の屋根になること。

④ 総延床面積が約290,000平方メートルとなること。

⑤ 総工事費用の概算計画が約1,300億円程度とすること。

⑥ 完成は2018年になること。

などの諸条件を掲げてコンクールが行われました。

ここで、この時の条件に付いて少々解説が必要になります。

上記で①のラグビー世界大会については、既に2009年に日本開催が決定していたこともあり、その開催に間に合うようにしたいとの思いからこういう条件が出されました。

②については、これ以降も色々物議を醸し出す内容ですが、IOCへのプロポーザル(提案)の時に、IOCより観客動員数は少なくとも8万人であって欲しいとの要望から来ている条件でした。

③については、現在野球場やサッカー場でも全天候開閉式屋根を擁している会場がいくつかあり、技術的には問題ないと考えた結果条件に入れられたという経緯があります。

④は、8万人収容の競技場であればこれぐらいの広さが必要だという概算計画の結果出された付帯条件でした。

⑤は、これもIOCへ招致運動していた時の流れでこの概算予算が決定したわけですが、それまでにもいくつかの専門家グループがいろいろな側面から費用概算が出してきたという歴史のある中、これぐらいの金額が相応ではないかと言う費用として出されたわけです。

⑥は、今回の東京オリンピックメイン会場となる国立競技場に関する新聞全面広告に公表された完成年度になります。

 

(3) 新国立競技場基本構想国際デザインコンクール

ようやく、新国立競技場がどのようになって行くかについてのコンクールが公募形式で行われたわけですが、2012年7月~2012年9月の2か月間の募集期間で、海外から34件、国内から12件の計46件の新国立競技場デザイン案の応募がありました。

さすがに新国立競技場超大型プロジェクトであり、対象物が競技場ということで技術的にも大きな障壁が無いと考えられることから応募が殺到したわけです。

その後、技術調査、予備審査、一次審査を経て新国立競技場の最終候補案としては海外7件、国内4件の計11案に絞り込まれました。

最終的な判断は、同年11月に実施され、以下の4項目をメインに選考されたということです。

① 未来を示すデザインであること

② スポーツ・イベントの際の実現性があること

③ 技術的チャレンジを実行する計画案であること

④ 実現性があること

新国立競技場の最終審査は上の4項目の他計10項目で審査がなされたわけです。

新国立競技場の最終審査結果は、イギリスから応募された「ザハ・ハディド」氏の作品が最優秀賞に決定しました。

このデザイン案が最優秀になったわけですが、その他優秀賞にはオーストラリアの「アラステア・リチャードソン」氏、入選には日本の「妹島和世」氏が栄誉を勝ち取りました。

この時のマスメディアでの放送をご記憶の読者の方も多いと思います。

筆者などは、サイクリング用の競技用ヘルメットのような流線型のデザイン性で、その秀麗さに驚かされました。

多くの一般の日本人が感動したことでしょう。

ここで、その後の顛末をご存じの方は多いと思いますが、このザハ氏について一言書き添えておかなければなりません。

世界レベルでの建築設計における世界的権威を持つ「曲線の女王」とも呼ばれるザハ氏は、そもそもイラク出身の女性で、イギリスを拠点に活動している世界的建築家です。

しかも世界各国の有名建築物を手掛けている相当全世界で有名な建築デザイナーです。

しかし、一方ではその設計の斬新さが建築常識を破るようなデザインが多く、その建築コストが一様に高騰してきたと言われています。

そのような中、今回の国立競技場デザイン案はこのザハ案を基に建て替えられることがこの段階で決定したことになります。

ちなみに、彼女の設計思想などを見たいと思われる方は、唯一日本では東京の青山にあるブティックで「ニール・バレット(Neil Barrett)青山店」の内装で見ることができますので、興味のある方は見られれば良いでしょう。

(4)2020年夏季オリンピック開催が東京に

こうして、日本招致委員会はザハ案を基本として招致活動を行ったわけです。

その結果ついに2013年(平成25年)9月に、東京が選ばれることになり、国立競技場もメイン会場として認められました。

この時点で、この国立競技場を使用しうる国際大会が、2019年開催の「ラグビー世界大会」であったことと、2023年に「FIFA女子ワールドカップサッカー大会」の招致活動にも弾みを付けました。

そこで、2014年(平成26年)夏に国立競技場の解体工事が開始されました。

これは、1958年(昭和33年)以来約60年に及ぶ歴史が塗り替えられる瞬間でした。

国立競技場施設だけではなく、隣接する「日本青年会館」、「東京都営霞ヶ丘アパート」なども同時に解体が開始され、新国立競技場に建て替えるべく工事がスタートすることになります。

この時には、翌2015年(平成27年)秋には、建替え工事が開始できる予定と発表されていました。

ここからが一気に新国立競技場構想に変化がみられることになります。

時期を追って見てみたいと思います。

2015年5月 文部科学省より「開閉式屋根の設置は五輪後にすること」「可動式観客席を仮設に変更すること(1万5千席分)」が発表されました。

2015年7月 突如「安倍晋三首相」が記者会見において新国立競技場建て替え計画の白紙化が発表しました。

この時に、ラグビーワールドカップの新国立競技場での開催を期間的に間に合わないとして断念することを同時に発表しました。

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2015年8月 再び公募型のデザインコンペを行うことが決定し、9月から募集開始、12月に選定結果の発表とされました。

2015年12月 結果的に2案のコンペ参加がありましたが、最終的に「大成建設・梓設計・隈研吾建築設計事務所」のデザイン案が採用され、優先交渉権を付与することになりました。

この結果、隈研吾氏が一躍脚光を浴びることになりましたが、一般人にとって日本の建築家の中では有名な建築家であったことが再認識されることになりました。

交渉の結果、翌月の2016年1月に約25億円で第Ⅰ期事業として締約が締結されました。

ここまでの変遷では、ザハ案が一転覆ったことになりましたが、その理由には莫大な費用と、想像を絶する技術的困難性、運営維持費の高騰が予測されたことに起因していました。

このことは、広くマスメディアを通じて国民に知らされ世論としてザハ案不採用推進に動いたためでした。

(5)東京オリンピック開催決定後の紆余曲折について

上にご紹介したように、オリンピック開催計画活動の時とは異なる会場計画案が次々に出されることになりました。

「会場総面積の縮小」や「開閉式屋根の建築延期」などを含め、2013年9月に東京に開催地が決定した時期以降に当初誘致の目玉であった「ザハ案」が不採用になったことになりました。

そのため各々の計画変更については、IOC(国際オリンピック委員会)に許可を得て行われることとなりました。

現在この稿を執筆中の時期(2019年10月下旬)に、マラソン競技に関する会場をIOCの提議で札幌に開催会場を移転すると大きく報じられています。

これに対して、日本側として東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長である森喜朗氏は「あくまでもIOCの決定であり、日本が文句を言える立場にはない」というコメントを公表しています。

これは、今まで誘致のために行ってきたメイン会場である国立競技場などが、招致活動当時の面影もないほどに建築設計変更を行ってきたことに対する「後ろめたさ」の証とも言われています。

つまり、美味しい話、夢のような話で釣った東京オリンピック開催招致でしたが、実は中身のない現実離れした実施案であったことが露呈したという見方があります。

日本としては、釣った後からIOCへ徐々に続々とその改定案を持ち込み、了承を得て変更してきたという事実があります。

マラソンという街ぐるみ、都市ぐるみで行う競技を、高温多湿との理由で東京開催よりも、札幌での開催をというIOC決定に対して、日本のJOC委員会などで反対論が燻ぶっただけの状態だということはこの証であるとみられています。

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つまり大きな反対の声として上がらなかったのは、こうしたIOCへのエクスキューズの表れであるという識者もいます。

特に国立競技場の建築問題は大きな課題となっていたことは事実です。

これは、多くのマスメディアにおいて、IOCが今年開催されたカタールのドーハでの女子国際マラソンにおいて、当地の高温多湿による棄権率の高さを危険視し、来年開催の東京オリンピックでもこの惨劇を起こさせたくないという意味の報道を行っています。

それも一部は事実だと思います。

しかし、IOCとしても、これだけ日本の変更計画を承認したのだから、IOCとしての変更案も認めなさいというような雰囲気があったと言われています。

言い換えるならば、これだけ約束と違う計画変更を認めてやったのだから、マラソン会場の変更ぐらいは認めなさいということに言い換えられます。

この案が実行されるのであれば、この稿のテーマである国立競技場をゴールとするマラソンが無くなってしまうということになります。

これには、チケット問題などが大きな問題となりそうです。

現在、2019年10月末日に開催予定のIOC定期委員会での決定待ちと言うことになっています。

注目しておきたいことですね。

(6)新国立競技場を建設する費用の問題

現代の大型競技場建設には、それなりの建築費用が掛かることは衆知の通りです。

オリンピック招致の際には、この国立競技場の建設費用を約1,300億円と概算して招致活動を行ってきました。

そのこと自体は全く悪くないのですが、東京オリンピック招致決定後に採択されたザハ氏の設計案では、最大で3,000億円となり、大会後その施設の終焉までにかかる費用、いわゆる「ライフサイクルコスト(LCC)」が、1兆円を超えるという試算が出てしまいました。

これでは、国民の理解を得られるどころか大会に汚点を残してしまうことが考えられ、急遽再コンペに至ったということの理由の大きな一つとなっています。

結果、前項でも記述しましたが、「大成建設・梓設計・隈研吾」案では、約1,490億円となりました。

そもそも、前の国立競技場改築のザハ案がこのように高騰したのには以下の理由が挙げられています。

① 巨大なアーチ構造を持つ可動式屋根の新競技場の特殊性による建築費高騰

② 建設資材や労務費の高騰

③ 消費増税問題

上記3つの理由が識者によって公式に掲げられていますが、特に②に関しては、2011年発生の東日本大震災や東京都心部の大型再開発による建築費の高騰を上げる識者が多くいました。

①、③は招致活動の当時から想定できた話で、今更の感は大いに感じさせる原因だと言われています。

総工費の見直しを図ることになったわけですが、既に廃案となったザハ案に対しても、関係設計費用などで既に約60億円もの費用が発生し、税金で賄われていることは多くの国民の知らないところではあります。

(7)新国立競技場建設のコストパフォーマンス

過去におけるオリンピックスタジアムの建築費用について5大会分をご紹介することにします。

2016年開催のブラジル・リオデジャネイロ大会では約550億円、2012年のイギリス・ロンドン大会では約800億円、2008年開催の中国・北京大会では約500億円、2004年開催のギリシャ・アテネ大会では約350億円、2000年のオーストラリア・シドニー大会で約680億円となっています。

こうして眺めると如何に今回の国立競技場「改修工事」が高額な工事費になるかがお分かりいただけると思います。

ちなみに、日本国内の民間企業が施主となったものでは1998年(平成10年)に完成した「日産スタジアム(横浜国際総合競技場:約7万2千人収容)」の建築費が約603億円という発表がなされています。

一般的に、こうした大規模競技場の場合、採算性の他色々な要因があるものの、観客席1席における建築費用の概算上限が概ね100万円程度となっていることが常識的だと言われていました。

今回の国立競技場の場合、費用高騰分を足して1,600億円の建築費だとすれば、観客座席数で割れば1席あたり約200万円ということになります。

しかし、一概にこの200万円が常軌を逸した金額かと言えばそうではなく、例えばアメリカ合衆国のテキサス州ダラスにある「AT&Tスタジアム」の場合、約8万人収容のキールアーチを用いた屋根で、開閉式のスタジアムの建築費用が約1,600億円だったと言う事実から、単純計算で1席あたり200万円になります。

この場合、アメリカでも絶大な人気を誇るMLB(メジャーリーグ)の試合とかアメリカンフットボールの試合が通年で開催されることから、十分に採算がとれる計算だったということです。

しかし、新国立競技場の場合、いろいろな制約があり、集客できるスポーツ大会の開催が難しいことやコンサートも騒音問題などがあり、やはり極端に高額な施設と言わざるを得ないかもしれません。

(8)新国立競技場改修工事の最終決定案について

このように、種々のコスト問題などが騒がれたりしていますが、結果的には中庸案ともいうべき内容になりました。

それでも国家的事業を行う会場の設計案ですので、それなりに名目が必要になります。

そこで、新たな設計案に関する思想を公表していますので、念のためここで列挙しておきます。

① 「アスリート第一」の思想を重視した。

② コスト抑制と施設機能は原則として競技に限定したものとした。

③ 屋根は観客席の上部のみの設計に変更した。

④ 五輪・パラリンピックのメインスタジアム水準としての施設を意識した。

⑤ 2020年春までに確実に完成できる設計を重視した。

⑥ 整備期間の圧縮のため、設計・施工を一貫して行う方式を採用した。

⑦ プロセス(工事行程)の透明化を推進することにした。

⑧ 日本らしさに配慮することも重要と考えた。

⑨ バリアフリー、安全安心、防災機能、地球環境、大会後の維持管理等を考慮した。

⑩ 大会後は民間事業へ移行を計画することを前提とした。

⑪ 安倍内閣の全体で責任をもって整備を進めることを確認した。

⑫ 新たに専門家による審査体制を構築することにした。

以上のような新設計案に関する付帯決議のような文書が公表されています。

色々な項目がありますが、その一つ一つに対してアレコレと言うことはここでは差し控えたいと思います。

とにかく2020年の東京オリンピック大会に間に合うような競技場建設が出来上がりつつあるということで祝着と言うことにしなければなりません。

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新国立競技場のまとめ

新国立競技場に関するアウトラインから現在に至るまでの経緯をご紹介しました。

日本で開催される大イベントでは度々あることですが、「結果オーライ」と言う思想です。

「結果良ければ全て良し」という思想です。

決定に至るまでの行程がどのような経緯であろうが、非難されることが無ければそれで良しという感覚です。

今では数か月後に控えた国立競技場の「こけら落とし」に集中していますが、上にご紹介したようにその経緯たるや惨憺たる内容だとご理解いただけると思います。

1986年(昭和61年)頃から始まったバブル景気の時であれば「ウヤムヤ」に済まされていたことが、平成大不況を令和になりようやくジワジワ回復傾向にある時にすべきことではないと言えないでしょうか?

合理的に効率化した大会運営のためにも「無理・無駄・ムラ」を無くす計画でなければならないと思うのです。

ここでは敢えて取り上げませんでしたが、新国立競技場の改築工事では、使用する木材の問題、工事従業員の過重労働の問題、周辺環境の問題、オリンピック開催後の運営主体の不確定さ問題など様々な問題が山積されています。

そうした問題意識を敢えて取り上げなかったのは、これから始まる各種団体の動向や意思決定を待たなければどのような方向性で進むのかが全く分からないからです。

大型箱物の時代は終わったと言っても、大型箱物が周囲に与える経済効果は莫大なものがあります。

莫大だからこそその周辺に群がる人々が出てくるわけです。

そうした大型箱物の原資は「税金」であったり、「保険料」であったりすることが問題になるわけです。

公共の福利厚生に供するという目的だけで実行するのは、時代錯誤と言えるかもしれません。

執筆時においては、東日本を中心に台風の大雨による河川決壊災害、都市部、地方部問わずインフラが崩壊するという重大問題が発生している所です。

そうした復興に対する何十億、何百億円という費用の捻出に四苦八苦することを考えれば、大型箱物は一気呵成に「エイヤ」で決めてしまう感がするのは筆者だけでしょうか。

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