NAFTA(北米自由貿易協定)とは?加盟国

NAFTA(北米自由貿易協定)

国際社会における協定とは?

今回は、NAFTA(「ナフタ」と読みます)を取り上げてみたいと思います。

「北米自由貿易協定」と日本語では訳しますが、英語表記では、“North American Free Trade Agreement”と書きます。

その略称が「ナフタ」なのですね。

この協定の詳細をご紹介する前に、こうした多国間での協定について、筆者には一家言ありますので、その点についてまず記載させていただきたいと思います。

現在、国際連合加盟国には公式発表で193か国が加盟しています。

全世界の国の数と言っても良いでしょう。

ただし、日本が承認している国の内4か国は国連非加盟ですので、197か国が全世界の国数になります。

ちなみに、国連非加盟の3か国とは、「バチカン」「コソボ」「クック」「ニウエ」になります。

そうした全世界197の国々が、地域の利益や自国民と他国民との共存共栄を図って色々な協定を結んでいます。

今回テーマにあげた「NAFTA」もカナダ、アメリカ、メキシコの北米大陸の国で構成されています。

多国籍間での協定と言えば、この他に欧州連合(EU)では27か国のヨーロッパ諸国で構成されています。

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また、東南アジア諸国連合(ASEAN:アセアン)は10か国のアジア諸国で構成さています。

アフリカや中東にもそれぞれ経済を中心とした連携協定がその規模の大小に関わらず存在します。

これは、理想論的に地域の国々が、自国の利害優先ではなく協調路線で大きな地域連合として、まとまって共存共栄していこうという巨視的で鳥瞰的な視野での組織になります。

いわゆる未来志向ともいえる概念から生まれたもののはずです。

しかし、2019年の現代国際社会では、世界経済の歪みが隣国であっても互いに自国優先、自国利益のみに固執するようになっています。

現代社会は第二次世界大戦後の冷戦時代が終結し、新時代として位置づけられています。

戦前や戦後の冷戦時代は、「イデオロギー」つまり自由主義と共産主義という主義の相違によって西側陣営(自由主義圏)、東側陣営(共産主義圏)と単純に分けることが出来ました。

それが今や、イデオロギーに関係なく自国だけの利益を考えるようになりました。

改めてこういう事態は、種々の連盟や協定において具体的になればなるほど、混迷してしまう事態が頻発しているからです。

近くはTPPのアメリカ離脱、COP21での具体策が出ないなどが良い例です。

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この遠因としては、保護主義政策を全面に押し出したドナルドトランプ大統領が掲げる“America First”です。

このコラムでも以前に述べたことがありますが、これは、トランプ大統領が視眼的に大統領職にしがみつくためだけに謳っているような感じがします。

いわゆる国民に受け入れられるテーマを題材にすることで「集票」しようとする手法です。

一歩間違えれば、「衆愚政治」に陥ってしまう可能性もある危険な手法です。

彼の場合、実業家として以外に年齢、政治経歴、手腕、能力などの面においてどれも秀でるものが無く、聴衆受けする言葉しかない点に注目しなければなりません。

そうした彼の手法を各国がまね始めているということに気づかなければなりません。

自分に投票してくれる自国民さえよければそれで良いということです。

英国によるブレグジットも、中国による一帯一路政策もこの表れです。

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韓国による北朝鮮接近や日本バッシングは国内世論の集約という路線でしたが、ちょっとズレてきています。

ともあれ、自国優先の論法がまかり通る国際政治の中で、各種連携協定を結ぶとなると高い障壁が立ちはだかることになります。

19世紀初頭のアメリカ合衆国大統領であったモンロー大統領によるモンロー主義の頃のように、相互不干渉という主義は、今や経済、政治、人などがボーダレス社会になっている現状では不可能になっています。

お互いが譲歩し合うという姿勢が無ければ前進することが出来ないのです。

今回テーマに掲げたNAFTAはたった3か国だけの経済協定なのにもかかわらず、紛糾したことはまさしく自国の主張を譲歩しないという結果でした。

アメリカ合衆国という国際的に見てNo.1、No.2を占める超大国のトップの政策が全世界に及ぼす影響をもう少し考えるべきではないでしょうか。

これが私の一家言です。

長々とお読みいただきありがとうございました。

次から今回の本題であるNAFTAに関して詳細をご紹介しましょう。

 

NAFTAの歴史

前置きが非常に長くなりましたが、この項から具体的にNAFTAについてご紹介したいと思います。

NAFTA、北米自由貿易協定は今から遡ること四半世紀前、具体的には、1992年12月にアメリカ、カナダ、メキシコの北米大陸3か国により署名され、1994年1月1日に始動した協定です。

日本では平成4年にあたり、バブル景気の余韻にまだ浸っている時代でした。

当初はこれら3か国で以下の目的で設立された歴史があります。

① 商品、サービスの貿易障壁を撤廃すること

② 人の国境を越えた移動を促進すること

③ 公正な競争条件を促進すること

④ 投資機会を拡大すること

⑤ 知的財産権の保護や執行を行うこと

以上の目的をもって、アメリカ合衆国大統領ビル・クリントン氏、カナダ首相ジャン・クレティエン氏、メキシコ大統領カルロス・サリナス・デ・ゴルタリ氏により締結されたのがスタートでした。

この当時、上に示した①~⑤の目的以外にも付加的に協定を結ぼうと、以下の2つの補完協定が結ばれることになりました。

環境問題に関する補完協定

(North American Agreement on Environmental Cooperation、略称NAAEC)

労働問題に関する補完協定

(North American Agreement on Labor Cooperation、略称NAALC)

この補完協定で、環境問題、労働問題など協定として3か国間で結ばれることになりました。

それから、四半世紀たった現代において、アメリカ合衆国大統領であるドナルド・トランプ氏が掲げる自国優先主義により、大きく舵を切る状態になりました。

その結果、2018年9月30日に合意された、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に置き換えられることになってしまったわけです。

このUSMCAは“United States-Mexico-Canada Agreement”の略で、「NAFTA」の「FT:Free Trade」(自由貿易)という単語が外されてしまいました。

単に北米大陸にある3か国の協定でアメリカ主導型の味気ない協定名になり、名実ともに当初のNAFTA思想は薄れてしまいました。

ここでは、このUSMCAが旧NAFTAからどのような経緯で変更され、課題は何なのかについてご紹介したいと思います。

とその前に、このNAFTA経済圏が世界的に見てどの程度の規模になっているかについて知っておくことが大切ですので、その紹介を先に行います。

この数字は2016年時点の調査によるものです。

NAFTA経済圏

・参加国数 3か国

・人口 4億8,000万人

・GDP 21兆1,400億USドル

・一人当たりGDP 43.885USドル

欧州連合(EU)経済圏

・参加国数 27か国

・人口 5億1,100万人

・GDP 18兆4,000億USドル

・一人当たりGDP 35.939USドル

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東南アジア諸国連合(ASEAN)

・参加国数 10か国

・人口 6億3,800万人

・GDP 2兆5,500億USドル

・一人当たりGDP 4.0USドル

以上の概要からNAFTA3か国合算の規模は、EUに匹敵する規模であると言えます。

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NAFTAからUSMCAへの改定

次に、北米大陸3か国において互恵関係を結ぼうという協定であったNAFTAが、トランプ大統領の選挙中から彼の公約であったNAFTAの内容見直しが実行されました。

その結果、2018年9月に3か国によって合意され、同年11月30日に締結された協定がUSMCA(United States-Mexico-Canada Agreement)になります。

これには、アメリカ国民の実感として過去から人件費の安いメキシコへアメリカの産業移転が進んでしまい、製造業の衰退をもたらせたという漠然とした不安感からその克服策となっています。

さらには、この漠然とした国民が抱く不安感を辛辣に且つ強烈に煽ってきたのがトランプ大統領になります。

いわゆるトランプ大統領の「岩盤支持層」と呼ばれる人々がこれを支援し続けていることにも注目しなければなりません。

冒頭にご紹介しました国際協定の理想とは全く別次元の話で、政治家が国民の不安を駆り立てて自身に「集票」するという手法です。

この方法は、古今東西過去の歴史にも枚挙に暇がないほどにあります。

大日本帝国の時もそうでしたし、ヒトラーのナチス政権の時もそうでした。

現在で言えば、中国の習近平総書記も国民を煽り立てていると言えなくもない状態です。

継続的に何十年も行っているのが北朝鮮「朝鮮民主主義共和国」の金一族がそれにあたると思われます。

その現実の前には、理想論や理念では太刀打ちできない現象になっています。

したがって、このNAFTA見直しの中心は、アメリカからメキシコに向けての修正要求という側面が強く打ち出されています。

その為、まず初めにアメリカとメキシコの交渉、続いてカナダとの交渉という順に調印することになりました。

ちなみに、諸兄は覚えておられるでしょうか。

アメリカとメキシコ国境に簡単には超えることのできない高い壁を建設して不法移民を拒絶するとして、トランプ大統領が実際に壁を建築するというデモンストレーションを行ったことを。

時期あたかも、メキシコとのNAFTA修整交渉が始まった前後のことでした。

さらに2017年1月の大統領令に始まり、同年10月には高さ9メートルの壁の試作品を作るまでに至りました。

この当時、なんという子供じみた行動をするんだ、と思われた諸兄も多いと思います。

かくいう筆者も「不法移民の防止にそんなバカな」と思ったことを記憶しています。

しかし、よくよく考えてみれば、NAFTAにおける米国の修整要求が本気であり、イザとなれば国境封鎖さえやりかねないという意思表示になっていたわけです。

また現在も進行中である中国との貿易交渉の際にも、同じような手法をトランプ大統領は取っていることは、彼の手法自体がある程度見えてきているということでしょう。

それでは、最も注目される改訂点についてUSMCAでどのような内容になったのかについてご紹介したいと思います。

NAFTAに替わるUSMCAとは

上にご紹介したような経緯でNAFTAからFTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)が抜け落ちた新たな北米大陸における枠組みとなるUSMCAとは、具体的にどのような内容なのかについてご紹介したいと思います。

冒頭のテーマNAFTAに続く協定として大変重要な内容ですので、注目しなければならないものになっています。

そのため、逐条的な記載方法がより理解しやすくなっていますので、その流れでご紹介しましょう。

①乳製品に関する取り決め

乳製品に関する取り決めは、アメリカとカナダの二国間の取り決めが最重要になります。

カナダが現在もなお未批准のTPP(環太平洋パートナーシップ:Trans-Pacific Partnership Agreement)によく似ている内容になっていますが、アメリカ側の意向が大きく働いている内容になっています。

具体的には、カナダ国内における乳製品市場(2016年現在に確認されている市場規模)の3.6%の無関税枠が設定されました。

金額にして152億ドルとなっており、これはTPPでの無関税枠3.25%から高く設定されており、より市場開放を容認したと見ることができます。

更に、乳製品の格付けランクであるクラス7における価格設定条項を廃止し、よりアメリカ産の乳製品が輸入しやすくしました。

更に一般消費者向けには、免税限度額を今までの20ドルから150ドルに引き上げたことにより、カナダにおける米国産乳製品の消費者物価がより低くなりました。

② 自動車製造・販売の取り決め

自動車の問題では、原産地規則が大きく取り上げられました。

原産地規則とは、貿易に関わる製品や商品について、その原産地がどこになるのか?という問題で、モノの国籍を明確にするというルールのことを言います。

自動車の問題をご紹介する前にこの原産地規則の考え方について理解しなければなりません。

最も簡単な例で言いますと、仮にAという製品が、W,X,Y,Zという4つの部品からできているとしましょう。

その4つがそれぞれ異なった国から取り寄せた半製品で出来上がっているとします。

その結果Aという製品は一体どこの国の製品なのかが不明確になってしまいます。

また、輸入に際しての例で言うと、P国→(輸出)→Q国(加工・輸出)→R国(加工・輸出)→S国(輸入・販売)となる場合、この製品はS国で販売されるわけですが、S国では関税をどれほどかければ良いのかが分からなくなります。

これは、国別に関税率が異なることから起きる問題でもあります。

そこで、原産地規則の出番になります。

上の例で言えば、S国で販売するAという製品の現地調達率を増加させることでS国内の製造業を守る手法が一般的になっています。

そこで、自動車の問題になりますが、NAFTAにおいて自動車の場合、この原産地規則は62.5%だったのですが、新たなUSMCAでは、75%に引き上げられています。

初めの例ではW,X,Y,Zの部品の75%がS国内で調達しなければならないと規定しているわけです。さもなければ、莫大な税金を掛けるという話になります。

つまり、北米3か国における現地調達率が75%以上無い製品に関しては高い関税を掛けるということになりました。

これは北米3か国を守るために考えられたもので、これにより、自動車製造における部品調達について、いくぶん中国などのアジア圏から北米3か国に戻ってくると考えられています。

③労働関係の取り決め

USMCAでは、自動車製造の場合、完成車の40%~45%の部品を時給16ドル以上の工場で生産しなければならないとしています。

これは、自動車製造業種において労働力が安価な労働市場に流出することを防止していると考えられています。

この結果、最も安価な労働力の提供国であるメキシコにおける工場労働者の賃金上昇が考えられます。

これによって、アメリカに一部部品製造が回帰して来るとの期待がもたれています。

さらに労働問題に関する取り決めとしては、労働組合の問題があります。

日本でも労働組合が無い企業もたくさんありますが、メキシコでは法律自体が無かったことから問題視されていました。

そこで、メキシコでは、結社の自由及び団体交渉に関する国際労働機関の定める規約を順守するという国内法を新たに設定しました。

多くの安価な労働力を使用している国ではこのような労働者の権利が阻害されている現状から結ばれた内容になっています。

したがって、メキシコは米国やカナダの先進国と同様労働者搾取を行えなくなりました。

④知的財産に関する取り決め

知的財産権の権利行使期間の延長を取り決めたものでした。

具体的には、カナダにおける著作権の期間を延長して70年とし、録音された音源の場合75年とされました。

また、医薬品に関する特許権の延長も含まれます。

これには、生物学的製剤であるワクチンなどが該当し、結果10年になりました。

これは、これまでカナダでは8年間、メキシコでは5年間という規定を覆しより長期間特許権が守られるということになりました。

つまり、多くの最先端医療分野はアメリカに集中しており、アメリカの製薬企業などの権利をカナダやメキシコから守るという事態で理解されています。

⑤ 紛争解決に関する取り決め

USMCAでは、NAFTAで取り決められていた紛争解決の手法が3つの条項で採用されてます。国家間の貿易などに関するダンピング防止法違反や相殺関税の正当化などは、USMCAパネルが紛争解決の受付事務局となり、国際貿易裁判所に裁定を委ねる手法がとられています。

しかし、一方投資家や企業などの民間が国家を対象に紛争する場合、一民間企業や組織が差別的だと考えられる政策に対して、相手国を訴えることができるとしています。しかし、国家間の紛争ではなく民間VS国家にこの図式では上手く機能しないと考えられています。

⑥ 為替操作に対する取り決め

アメリカ、メキシコ、カナダの加盟3か国は、為替の意図的な操作を防止するために国際通貨基金(IMF)基準を順守する取り決めになっています。

つまりUSMCAの協定では、為替市場における市場介入が公開されることを前提としています。

3か国のいづれかの国がこの為替に関する異議を唱えた場合には、IMFが裁定する取り決めになっています。

以上の6項目がNAFTAに替わる新たな北米3か国における協定である「USMCA」の内容です。

しかし、2019年12月現在において、未だに一部重要項目で国家間調整が残っています。

さらに調整が終了した後には、各国内での批准作業が必要になり、各国国会での批准承認が必要になります。

そのため、それまでは今まで通りのNAFTAが有効性を持っており、3か国間の貿易などの取り決めは、今なおNAFTA体制のままだと言えます。

多くの政治家や評論家の方々の意見としては、USMCAの正式調印はアメリカのトランプ大統領の弾劾裁判の問題解決後になると見ており、2020年春が新NAFTAであるUSMCAが発効すると考えています。

NAFTAからUSMCAへ替わり、何が変わる?

① USTRの公表資料

今までご紹介しました新NAFTAであるUSMCAに関して、具体的にどう変わるのかについてアメリカの通商代表部であるUSTRがその効果分析を行い公表されていますので、それを参考にご紹介したいと思います。

これは、2019年4月18日にUSTRより公表された内容です。

ただし、主な内容はトランプ大統領の針小棒大で誇張された部分を忖度してUSTRが公表したとの評論を行う専門家も多く、実際下に示した効果が期待できるのかに疑問符がついている人も多くいます。USTRが公表した主要な効果は以下の三つになります。

・ アメリカ合衆国への340億ドル規模に及ぶ新しい自動車製造投資が行われる可能性がある

・ アメリカ合衆国国内で製造された自動車部品の新規購入が年間230億ドル規模で増加する可能性

・ アメリカ合衆国の自動車業界において76,000人規模のの雇用が創造される可能性

つまり、アメリカにおける自動車関連産業分野における効果が、非常に大きくフォーカスされていることになります。このことは、原産地規則によって域内における部品製造が盛んになること。

それに、更に労働条件の均質化に対して早々に対応できないメキシコなどの影響を受けてアメリカでの工場誘致が盛んになることを考慮しているとみられます。

アメリカ合衆国大統領であるトランプ政権にとって、冒頭ご紹介しましたように「集票」のみが目的であることから、自動車産業界における支持者層を固める意味では非常に有効なものとなっています。

また、メリットにはデメリットが付きものですが、デメリットに関する報告は余り公表されていない事実が選挙対策のための道具になっているという見方もできます。

② 指摘される異例な条項

 ・ 非市場経済国との自由貿易制限協定(第32章)

この条項の内容について条文をそのままご紹介すると非常に分かりにくくなっています。そこで、要約した内容もしくは読み替えた内容をご紹介します。

つまり、中国を念頭にカナダとメキシコが独自に自由貿易協定を中国と結ばないようにする条項と言えます。

2019年12月にようやく雪解けムードが出てきた米中貿易戦争ですが、トランプ大統領による中国バッシングの本質は変わっておらず、中国と自由貿易協定を加盟国が結ぶ場合には、その交渉を当事者国が開始する3か月前までに交渉開始の意図を他の締約国に通知することとしています。

更に、自由貿易協定に署名する30日前までに、協定の全文を他の締約国に知らせなければなりません。最終的に、締結国と中国が協定締結に至った場合には、6か月前の通告によりUSMCAを終了させることができるというものになっています。

これを平易な言葉で言い換えるならば、もし中国と貿易の自由協定を結ぶのであれば、事前に全てを知らせること、さらにもし締結をしたならこのUSMCAを解消するぞという強迫的な条項になります。

つまり、アメリカ側から見た一方的な意見をカナダとメキシコに課した条項だとみられてます。

しかし、カナダやメキシコにおいては、未だに中国との協定への意欲は消えておらず、先行き不安な材料となっています。

そのため、USMCAの協定自体の存続を危うくするという意味で「毒薬条項(Poison pill)」と呼ばれる条項になっています。

サンセット条項(第34章)

この条項は、またもやアメリカ側の提案で、3か国が揃って5年ごとに協定を見直し、協定更新で3か国の合意が得られなければ、自動的に協定が失効するするとする「サンセット条項」が要求されました。

しかし、この条項に関しては、カナダやメキシコの反発を受けて最終的にこの協定については16年の期限を設けることで協定発効後の6年目で再度見直しを行い、締約国が希望する場合に協定を16年間延長することが可能になりました。

これは、アメリカ側の短期的な状況変化により協定自体を変化させるかあるいは廃止するかという要望が承認されなかったことになりました。

カナダ・メキシコ側からの反対の最も大きな理由は、5年という短期間の設定であれば企業の誘致などに関わる長期的な展望での政策が構築できないというものでした。

 新NAFTAの最終像で見るトランプ政権

前項でご紹介したサンセット条項について、ここでもアメリカ合衆国大統領トランプ大統領の思惑が見え隠れします。

つまり、トランプ大統領の第一期の任期が2021年1月20日迄で、再選されれば2025年1月20日までが最長任期(二期満了の場合)になります。

ということは、2020年中に各国で批准するUSMCAを大統領任期が終了する2025年に合わせてサンセット条項を要求したという見方が出来ます。

しかし、この点は2020年に予定されている弾劾裁判や中間選挙の成り行きもあり、トランプ大統領が一期で終了する可能性もあることから譲歩したとも見れます。

なお、アメリカの場合、中間選挙は大統領を選ぶ選挙と言う選挙ではなく、以下の4つの意味をもって行われます。

① アメリカ議会の上下院議員や州知事を選出する

② 現大統領への実績を判断する選挙

③ トランプ大統領の率いる共和党が負けるとトランプ政権の運営が困難になる

④ 中間選挙に負けるとその2年後の再選が難しくなる

上にご紹介しました中間選挙が2020年に実施されますが、それまでにNAFTAを利用してアメリカ国内自動車産業の復権、新たな雇用の創出と言う実績が出来たことになります。

支持基盤がより強固になったと言えるでしょう。

ここ数十年に及ぶアメリカ合衆国大統領で、トランプ大統領ほど全ての政策が選挙対策だったという大統領はいなかったように思います。

まとめ

今回は、NAFTA、北米自由貿易協定という1994年1月からスタートした北米大陸3か国の中で自由に貿易連携していきましょうという協定について特集しました。

しかし、ここにきて新NAFTAであるUCMCAに変貌することで、その様相が大きく変わろうとしています。

国としての未来志向での協定であったはずのNAFTAですが、トランプ大統領の集票演出のパフォーマンスと言う見方もできます。

トランプ政権になってからのアメリカに関する各種の政治、経済状況を見るにつけ全てがトランプ大統領の思惑の通り進んでいるとしか思えなくなります。

たとえば世界的に問題になった北朝鮮問題についても、国連制裁決議が出される前後で、あわただしく米朝会談などエクセントリックな演出とともに行われました。

しかし、2019年末現在どうでしょう。全く反応していません。北朝鮮側が焦っている印象もあるほどです。

つまり、アメリカ国内世論が北朝鮮問題に飽きてしまっていると見たように思えます。

更に、最近開催されたCOP21、締約会議での地球温暖化問題もどこ吹く風といった姿勢で望みました。

これは、アメリカ産業界にとって逆風であり、産業振興、雇用創出を「集票の旗」としているトランプ大統領にとっては、関わりあいたくない話なのです。

以上、北米状況を最もよく表しているNAFTAに関してご紹介しました。

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