フランスの老後の社会保障の年金制度と健康保険の仕組みは問題ないのか?

フランス

今現在、先進国諸国においては少子高齢化が進み、社会保障への影響も非常に大きなものとなっています。

そんな先進国の中でも高齢化が始まるのが最も早かったのがフランスとなります。

今回は、そんなフランスの年金制度や医療制度がどのようなものであるのかについて紹介していきたいと思います。

フランスの高齢者

フランスの年金制度、及び健康保険に関して説明する前に、フランスの高齢者の現状について説明したいと思います。

老年人口とは、65歳以上の人口のことを指し、総人口に対する老年人口の比率を高齢化率と呼びます。

高齢化率が7%を超えた社会を高齢化社会、14%を超えた社会を高齢社会と呼びます。

また、21%を超えると超高齢社会となります。

高齢化率が7%から14%へ増加するまでの期間は倍加年数と呼ばれ、高齢化の進むスピードを評価する一つの指標となっています。

内閣府のデータによりますと、フランスの高齢化率が7%を超えたのは1864年、14%に到達したのが1979年であり、倍加年数は115年となっています。

これは、他の先進国の数値と比較して長い期間であると言えます。

具体的なデータを挙げると、スウェーデンは85年、アメリカは72年、日本は24年となっています。

日本の高齢化率が7%に達したのは1970年です。

フランスは日本よりも高齢化が始まる時期は早かったものの、スピードが遅かったため倍加年数は非常に長い値となりました。

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フランスにおける高齢者の就業状況

フランスの高齢者の就業率は低い水準にあります。

その理由を知るためには、フランスにおける「働き方」の風土を知る必要があります。

厚生労働省が発表している「2005年~2006年海外情勢報告」の諸外国における高齢者雇用対策において、フランスの高齢者の就業率に関する見解が述べられています。

フランスの55歳~64歳の、男女合計の高齢者就業率は1984年ごろには50%弱ほどでしたがその後低下していき、1994年から2000年の間は40%を割っています。

他の先進国諸国と比較してみましょう。

まずはアメリカです。

アメリカの高齢者就業率は1984年前後から60%と70%の間を上下しています。

イギリスでは、1984年ごろから60%前後の値を推移しています。

ドイツはアメリカ・フランスと比較して若干水準が下がり、1984年ごろから50%弱の数値となっています。

フランスはそれよりも低い水準であることがわかっていただけたかと思います。

次に、フランスの高齢者の引退年齢について見ていきたいと思います。

引退年齢には公式引退年齢と実引退年齢という2種類の指標が存在しています。

公式引退年齢とは、公的年金を満額受給することのできる最低年齢のことを、実引退年齢は40歳以上の者が継続就労の意思なく退職した年齢のことを指しています。

OECD事務局の資料によれば、2004年時点でのフランスの公式引退年齢は男女ともに60.0歳、1994年~2004年の実引退年齢は男性が59.3歳、女性が59.5歳となっています。

同年における日本のデータと比較してみましょう。

日本の公式引退年齢は60.0歳でフランスと同じですが、実引退年齢は男性が69.3歳、女性が66.1歳となっています。

先に高齢者の就業率を比較した三国(アメリカ・イギリス・ドイツ)と比較しても実引退年齢は低い水準となっていることがわかります。

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さらに、フランス調査統計局の発表した報告書の内容も見てみましょう。

2006年に発表した「年金生活移行過程調査」によれば、現役を引退した高齢者が年金を受給するまでの期間に関する報告がなされています。

まず、2006年の時点における就業率は、50歳では80%で、高齢になるにつれ就業率は減少し、62歳では14%となっています。

60歳以降の高齢者における年金生活者の割合は65歳以上で80%であり、65歳以上の高齢者の大半が年金生活をしているということが明らかになっています。

そして、現役を引退してから年金を受給するまでの間に移行期間を設ける場合と設けない場合が存在します。

50歳から54歳、55歳から59歳、60歳から69歳で区分した時、明確な差異が生じていることもわかりました。

50歳から54歳の者で、現役引退から年金を受給するまでの期間で「年金受給後も継続して就業した」人の割合が71%であったのに対し、55歳から59歳の者については52%に減少し、60歳から69歳の高齢者においては僅か6%に減少しています。

60歳から69歳で退職した人の81%が、現役を引退してから3ヶ月未満のうちに年金を受給していることがわかりました。

また、職種によっても退職年齢は異なります。

農業従事者については、最後の仕事を辞めた時の年齢は50歳~54歳、55歳~59歳、60歳~64歳、65歳~69歳のいずれの年齢層においても10%以下と低い水準であるのに対し、中間管理職とブルーカラー労働者は、50歳~59歳に退職した者の割合のほうが60歳~69歳に退職した者よりも多くなっており、早期退職の傾向があることが明らかとなりました。

50歳から54歳の期間に退職した理由としては、約40%が失職、約25%が健康や障害となっています。

また、60歳以上の年齢層の者で退職した理由の約75%が退職年金を受給するためであるということもわかりました。

そして、早期退職を希望する意思を持つ者が多いこともわかっています。

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早期退職を考えているかどうか調査され、性別ごとや年齢層の違いなどによる結果が明らかになっています。

まずは男女です。

早期退職を考えている者は、男性で58.9%、女性が41.1%、早期退職を考えていない者については、男性50.2%、女性49.8%となりました。

ここまで、フランスの高齢者は早期に退職する傾向があることを、データを交えて説明してきました。その理由に関する調査も行われているのでご紹介したいと思います。

このような現状となっている大きな理由として考えられるのが、1970年代以降に制定された様々な制度になります。

これらの制度は、労働市場から高齢者を早期引退させるようなものとなっています。

これらの制度が制定されたのは、若年層の雇用機会を増大させるためとなっています。

それに加えて、余暇を楽しむ傾向のあるフランスの風土も早期引退をより強固なものにしているという見方も存在しています。

また、労働を継続する理由として、より時間をフレキシブルに使用可能であることや労働時間が短くなるならば職業活動を継続する理由足り得るという調査結果も出ています。

さて、このようにフランスにおいては高齢者の早期引退が根付いているわけですが、財政状況が悪化したことを受けて早期引退制度は廃止されていく流れに変わりました。

それに加えて年金改革や失業保険の改革などが行われ、徐々に就業率は上昇していきます。

前述したように、2000年ごろ40%を割っていた就業率は、2016年時点では49.9%にまで上昇しています。

また、同時に求職者も増加する傾向にあります。

フランスにおいて職業紹介であったり失業保険に関する業務を行ったりしている組織が雇用センター(Pôle emploi)と呼ばれるものであり、この組織へ登録されている求人者数は2000年中ごろまでは1万人程度で、2017年10月時点においては32万人にまで増加しているとのことです。

高齢者の雇用を促進するためにどのような対策が実施されているのか紹介していきたいと思います。

まずは職業紹介ですが、これについては前述の雇用センターと、雇用主の団体が協力して開催している高齢者就職フォーラムというものがあります。

2017年度に開催されたフォーラムには8千人以上の求職者が参加したとのことです。

フランスの年金制度

フランスの年金制度は3階建ての構造となっています。

一階部分に該当するのが基礎年金制度、二階部分にあたるのが補足年金制度、そして三階部分に該当するのが追加捕捉年金制度です。

一階部分が公的年金、二階部分は準公的年金、そして三階部分は企業年金となっています。

そして、職域によって様々な制度が設けられています。

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一般被用者が対象となっている一般制度、公的機関もしくは準公的機関の被用者が対象の特別制度、農業を営む者が対象の農業制度、その他自営業者を対象とした職域ごとの自治制度に分類されます。

一般制度には加入者全体の約70%が、特別制度には加入者全体の20%が加入しています。

学生や主婦のように無業の者については強制加入の適用外となっており、これらの者については一般制度に任意で加入が可能であるようになっています。

基礎年金制度は強制加入であり、賦課方式となっています。

加入時の職種によって、自動的に加入する職域年金が決定されます。

年金の支給額は所得比例方式であり、就業年数と就業していた期間の給与において決定されます。

基礎年金制度の財源は、加入者の支払う保険料を主としています。

保険料には上限が設定されている料率のものと、賃金の全体にかかるものの2つがあります。

前者の保険料率は15.45%であり、2018年における上限報酬限度額は、一月あたり3.31ユーロと定められています。

それに後者の、賃金全体の2.3%の額を拠出することとなります。

また、保険料は使用者と被用者で案分されます。

上限の設定されている前者の15.45%については、使用者が8.55%、被用者が6.90%、賃金全体にかかるほうに関しては、使用者1.9%、被用者0.4%と定められています。

また、国庫の負担ぶんもあります。

9.2%のCSGと、0.5%のCRDSです。

最も多くの者が加入している一般制度における年金の支給開始年齢は62歳となっています。

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年金の満額支給が開始するのは65歳で、2022年までに段階的に67歳にまで引き上げる予定となっています。

年金を受給する資格を得るための最低加入期間は3ヶ月となっています。

年金を満額受給するためには加入・拠出が172クオーター(516ヶ月)に到達していなければいけません。

年金の財政方式は基礎年金、補足年金ともに賦課方式となっています。

賦課方式とは、年金支給に用いる財源を、その時点における保険料の収入によって賄う方式のことを指し、広く用いられている方式となっています。

1999年には年金積立基金のFRRが設立されています。

FRRの財源となるものは国営・国有企業の民営化による株式売却の収入や、先に述べているCSGのうち企業の負担するぶん、一般制度や老齢連帯基金の黒字ぶんなどとなっています。

年金資金が枯渇するためのリスク軽減として、1500億ユーロを蓄えることを目標にしています。

しかし、2008年のリーマンショックによってマイナス運用となり、その後株の割合が引き下げる措置が取られています。

年金の受給者数は2015年時点で約1598万人であり、支給総額は1109億ユーロ、基金の残高は2016年末時点で360億ユーロとなっています。

給付に関しては、一般制度と補足制度がともに同じ取り決めとなっています。

前述した満額支給の条件を満たしている場合、就業していた期間のうち、賃金の最も高かった25年間の平均賃金を算出し、その5割を支給するものと定められています。

また、一般制度の基礎年金においては、年間の支給額の上限と下限が設定されており、上限が19866ユーロ、下限が7615.94ユーロとなっています。

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また、支給の時期を繰り上げることも可能となっています。

例えば1955年生まれで174クオーター以上加入している場合であれば56歳4ヶ月で支給が可能となります。

反対に繰り下げ受給も認められています。

先に述べた、年金を満額受給する条件を満たしている加入者が60歳以降も働く場合は、年金支給時に一定割合増加となります。

60歳以降就労の場合、保険料を拠出する1クオーターごとに支給率のポイントが0.75ポイントずつ増加していきます。

この制度を導入した理由としては、ここまでに述べてきたフランスの高齢者の就労状況があります。

早期引退の根強いフランスにおいて、労働をすることのメリットを設けることによって高齢者の雇用を促すという意味合いもあるのです。

また、フランスの高齢者の就労状況に関するところで少し述べましたが、条件を満たしていれば年金を受給している期間中に就労をして収入を得ることも可能となっています。

従来、年金については完全に就労から引退した者のみにしか支給されていませんでしたが、その後何度か法改正が行われ、緩和されることとなりました。

働きながら年金を受給する条件としては、就労により得られる賃金と年金との合計が、該当者の年金受給前の最終賃金以下となっています。

また、就労を開始するのは年金受給が始まってから6ヶ月経過している必要もあります。

仮に年金受給前の最終賃金以上の報酬を得ることとなった場合は年金の支給が停止することとなります。

年金を受給しながら働く者については増加してきていることがわかっており、2009年時点では242972人であったのが2016年には368504人となっています。

続いて、補足年金制度の説明です。

補足年金は元々私的な制度として始まったものですが、今は強制加入となっています。

日本でいうところの厚生年金制度のような立ち位置で運用されている制度です。

補足年金には一般の労働者向けの制度と管理職向けの2種類が存在します。

年金の運営主体となっているのは、一般労働者の制度が補足年金制度連合:ARRCOで、管理職員が管理職年金制度総連合:AGIRCです。

支給開始年齢や、支給の条件などは労働協約によって異なっています。

フランスの年金制度の課題

フランスでは第二次世界大戦後にベビーブームを迎えています。

そのベビーブーム世代が年金受給者となったときの世代間における保険料拠出の格差が生じると懸念されました。

そこで、以下に示す施策が行われることとなります。

まずは2020年までを見据えた施策で、2014年から3年をかけて保険料を引き上げることとしました。

また、2040年までを見据えた施策として、満額の年金を受給することのできる期間を2020年から段階的に増加させ、2035年には172クオーターとすることも定めました。

また、上記のこと以外の面でも、平等の確保が課題となっています。

2008年の年金改革においては、男女、職歴、制度、私的年金に関する平等が優先的に議論するべき課題として挙げられています。

まず男女間の平等に関しては、年金額の差が存在しています。

この差を埋めるための方法としては、女性の働きやすい環境を作り、雇用を促すことが考えられていますが、そのためには仕事と家庭を両立させるためのサポートが必要であるとされます。

また、制度間の格差については、公務員を除く特別制度が他の制度と比較して優遇されているという現状になっています。

2017年に大統領となっているマクロン氏は今後大きな年金改革を行うことを表明しており、制度間の格差がなくなるような統一制度を提案するのではないかとも予想されています。

フランスの年金制度のまとめ

フランスの年金制度は、基礎年金制度、補足年金制度、私的年金制度の三階建ての構造からなり、さらに職域によって多数の制度が立てられています。

フランスにおいては高齢者が就労市場から早期引退する傾向にあり、高齢者の雇用促進のために年金の繰り下げ受給によるメリットを設けるなど対応をしています。

今後は、2017年に大統領に就任したマクロン氏が行うとされている、年金制度の大きな改革に注目が集まるところとなっています。

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フランスの健康保険

フランスの健康保険は、疾病保険と呼ばれる名称で運用がなされています。

運用方式は社会保険方式であり、国民皆保険が達成されています。

社会保険方式とは、加入者が保険料を拠出して、それに応じてサービスを受ける形態のことを指します。

フランスの厚生省の所管であり、職域ごとに多数の制度が存在しています。

それぞれの職域保険を管理する機構としてcaisseと呼ばれる金庫が設置されています。

多数の制度が存在していますが、そのうち一般制度と呼ばれる制度に加入している者が全体のうち8割と大多数を占めています。

一般制度を含む各制度は強制加入となっています。

日本と同じく国民皆保険を達成しているフランスですが、日本にある国民健康保険のような地域保険制度はありません。

そのため現役を引退した高齢者については、就労していた時と同じ疾病保険に継続して加入することとなっています。

一般制度を管轄しているのは全国被用者疾病保険金庫:CNAMTSと呼ばれる機構になっています。

その下で100程度の初級疾病保険金庫:CPAMが配置され、被保険者の適用や給付、保健福祉活動等を行っています。

医療費の支払いは、従来は紙ベースとなっていましたがIT化が進められており、後述する現物給付化も徐々に可能となってきています。

疾病保険の財源は、先に少し述べたように保険料が主なものとなっており、使用者が13.1%、被用者が0.75%の保険料率で拠出を行うこととなっています。

2000年にWHOが世界の保健機関を評価しており、その中でフランスに関しても言及されています。

そのレポートによればフランスはイタリア、スペイン、オマーン、オーストリア、そして日本などの主要国のうち最高のヘルスケアを提供しているとされました。

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医療サービスを受けることができる病院は公立病院、非営利団体の運営する病院、私的営利病院の3つに大別されます。

公的医療保険の支給は償還払い制が主となっています。

償還払いとは、患者および利用者が医療サービスの提供者に全額を先に払い、のちに保険者に請求を行い、支給を受ける仕組みのことを指します。

医療サービスの種類によって償還率は異なっています。

例えば外来に関しては70%で、通常の医薬品は65%と定められています。

100%償還されることはありませんが、後述する私的保険に加入していることで一部を受け取ることは可能となっています。

給付対象となる医療サービスは、医療、歯科医療、薬剤、医療機器などをはじめとし、予防接種や検診等も該当します。

受診する際は、事前にかかりつけ医を登録するといった必要はなくフリーアクセスで、この点に関しては日本と同様の仕組みとなっていました。

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ただし、事前に予約を入れて受診することが一般的である点は異なっていました。

これらの点については、後述する改革によって改正が行われています。

フランスの医療制度については、ここまで述べてきた通り疾病保険を核として運用されています。

公的な保険のみで見た場合、患者の自己負担割合は高い水準となっていますが、公的保険の適用範囲外となる部分については民間保険等でカバーされる仕組みです。

しかし、これにより国民の間に階級差が生じるという問題も発生しています。

その他の問題として、医療費の増大ということも挙げられます。

フランスの2008年におけるGDPに占める医療費の割合は11%となっています。

国際連合が同年に発表した人口増加率のデータによれば、フランスの人口増加率は0.53%です。

このように人口増加率と比較して医療費の伸び率が高い状態が続いていました。

日本、スウェーデン、オランダ等の医療制度については、GDPの8%以下でフランスの制度と同等程度の効率性を発揮していることからも、医療費割合が高い水準にあることがわかるかと思います。

医療費が増大する原因としては医療機関へのフリーアクセスや、自己負担割合の水準が低いことなどが挙げられていました。

先に少し述べた一部負担について、より具体的な内容を紹介したいと思います。

まず外来は30%、通常の薬剤が35%、移送費が35%、入院が20%、検査や医療機器が40%となっています。

また、効能が中程度の薬剤、低い薬剤に関しては自己負担率が上昇し、中程度のものが70%、低いものが85%となります。

一部負担の制度が導入されるきっかけとなったのは1930年に社会保険が創設された際に存在していた制度となります。

疾病保険のさきがけとなる1945年に関しても、当時は戦後であり、医療費が際限なく上昇することを防止するために、患者が一部負担する制度を残すことに決定したのです。

上記の固定率以外にも各種の負担が存在しています。

1983年には入院時に定額負担をするという制度が誕生し、それ以降各種負担が導入されるきっかけとなっています。

2010年以降、入院時定額負担は、精神科が13.50ユーロ、精神科以外への入院が18ユーロとなっており、これは制度開始時と比較して上昇しています。

2004年には主治医関連の自己負担が規定されました。

まず保険の加入者は、主治医を選択することが可能となります。

それよりも高度な医療を受ける、つまり専門医の医療を受ける際には主治医を経由する必要があります。

仮に主治医を経由せずに専門医の医療を受ける際には、自己負担として40%が加算されることとなりました。

2005年には1ユーロの定額負担が導入されています。

この定額負担を新設した目的としては、医療制度を維持することが挙げられています。

この定額負担金を払う場面としては、開業医や病院外来の受診が挙げられますが、一部患者については支払わなくても良いと決められています(具体的には18歳未満の児童や、妊娠6ヶ月以降の妊婦などが挙げられる)。

2006年には高額医療についての規定がなされました。

120ユーロ以上の高額医療を受ける際には18ユーロの自己負担をすう必要があります。

一部の例外を除いて医療機関に定額負担金を支払うことが必要になりました。

2008年には保険免責制度が導入されています。

入院時以外の薬剤1箱が0.50ユーロの免税、入院時以外のコメディカル(医師や歯科医師などの指示のもとに業務を行う医療従事者のことを指す)が0.50ユーロ、移送が2ユーロと定められました。また、保険免責には一日の上限額、年間の上限額も定められました。

フランスにおける私的保険

フランスにおいては、民間保険市場が存在しており、前述した私的保険を提供する構造となっています。

これらの民間保険は多数存在しており、対象とするのは公的保険の対象外となる部分となっています。

具体的には公的保険の自己負担外の部分、私費診察の医療費などを挙げることができます。

フランスにおける民間保険は、公的保険とは異なり任意加入となっていましたが、加入率は非常に高く2000年時点で86%の国民が加入しているという実績があります。

加入率が高いと理由としては、民間保険の設立、運用されてきた経緯が関係しています。

フランスにおいては従来から、民間の共済制度が職域ごとに発展していました。

そのうち核となる部分を独立させ公的保険が誕生したという背景があります。

そのため、フランスにおいては公的保険と民間保険が実質的に二階建ての構造を取っていたと言えます(その場合、一階部分にあたるのが公的保険であり、二階部分にあたるのが民間保険であると言えます)。

フランスの民間保険を提供する保険者は共済組合、相互扶助組合、一般保険会社の3つに大別することができます。

フランスの医療制度におけるその他の改革

これまで医療制度に行われてきた改正には、1998年のリオネル・ジョスパンによる改正と、2004年および2006年に行われたもの、そして2013年に実施されたものが代表的です。

2004年と2006年に行われた改革においては、全額払い戻しの規の他、かかりつけ医制度、前述した自己負担額の新設、高額制度等が定められています。

全額払い戻しについては、それを受けるためには総合診療医の紹介状が必要であることが定められました。

かかりつけ医制度については、先に述べた自己負担の取り決めの他に、紹介状が無い状態で他の医師を受診した場合には、協定価格外の医療サービスの償還を受けることが不可となることが定められました。

その場合は公的保険、私的保険の双方で償還払いがなされないということになります。

2006年の時点においては、フランス国民のうち77%がかかりつけ医を持っており、そのうち99.6%とほとんどが一般医を選択するという状態になっています。

2013年に規定されたのが、補足的な疾病保険(前述した民間保険はここに含まれる)を全ての被用者に適用拡大するものです。

ただし、一般保険と異なる点としては、一般保険が強制加入であるのに対し、補足的な疾病保険においては労働者と使用者間の間で合意が必要となることが挙げられます。

加えて、一年未満の一時的な労働者や有期労働契約者などについては、労働者自身が加入しないという選択を取ることも可能となっています。

拠出する保険料については、使用者側が少なくとも50%以上を負担することと定められています。

また、給付に関してはそれぞれの制度によって内容が異なります。

フランスの健康保険まとめ

フランスにおける健康保険は、疾病保険と呼ばれる制度であり、国民皆保険が達成されています。

フランスの医療制度の特徴としては、自己負担の割合が高いということが挙げられまるものの、公的な医療保険の適用範囲外となる部分について、民間保険などによるカバーもなされています。

ただし、それにより国民の間に階級差が生じるという問題も抱えています。

また、従来の制度においては医療費の伸び率が高いという問題も抱えており、現在に至るまでの間にフリーアクセスや自己負担に関する様々な改正が行われてきました。

いち早く高齢化が始まった国であるフランスの動きは注目すべきであるといえるでしょう。

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