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イギリスの老後の社会保障の年金制度と健康保険の仕組みとは?

イギリス

「ゆりかごから墓場まで」という言葉を耳にした人は多いのではないでしょうか。

これはイギリスの老後の社会保障に関する言葉となっています。

イギリスの社会保障について見ていくと、日本と大きく違う部分が数多く見られます。

今回はイギリスの年金制度、健康保険(医療保険)のことについて詳しく説明していきたいと思います。

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イギリスの高齢者事情

イギリスの社会保障について説明する前に、イギリスの高齢者事情がどのようなものであるのかということから説明していきたいと思います。

イギリスも他の先進国同様、高齢化が進行していますが、その程度はどのくらいのものなのでしょうか。

65歳以上の人口を老年人口と呼び、この値が7%を超えた社会が高齢化社会、14%を超えると高齢社会、21%を超えると超高齢社会と呼ばれます。

そして高齢化率が7%から14%へ増加するまでに要した期間が倍加年数と呼ばれる指標です。

この年数が短いほど、高齢化率の上昇速度が速いということがわかります。

倍加年数は、先進国各国においてフランスでは115年、アメリカが72年、日本は24年、韓国は18年となっています。

イギリスの倍加年数は46年と、先進国の主な国々と比較するとやや短い水準になっています。

では次に、高齢者の貧困についてはどうでしょうか。

OECDのデータから、66歳以上の人々の貧困率に絞った数字に着目してみたいと思います。

まずはOECD各国と比較したイギリスの位置です。

2016年の時点ではイギリスの66歳以上の人々の貧困率は14.2%であり、OECD35ヶ国のうちでは13番目に高い値を取っています。

ちなみに貧困率が最も高いのは韓国の43.8%、次いでエストニアの35.7%、ラトビアの32.7%です。

イギリスは、2002年の時点では19.9%でその後3年間かけて緩やかに貧困率は下がり16.9%となっています。

翌年には19.4%と再び上昇していますが、その後は低下していき、2016年時点では14.2%にまで低下しています。

貧困率が低下した要因としては、後述する年金クレジットのような公的扶助制度によるものと考えられています。

イギリスの社会保険の歴史概要

イギリスの公的扶助について知るためには、イギリスのこれまでの歴史についても説明する必要があります。

1572年に制定開始、1601年に再編した、エリザベス救貧法と呼ばれる法律があります。

封建制度の解体に伴って、15世紀以降では乞食や浮浪者といった層が急増しました。

貧困者への労働を強制し、浮浪者を整理することを目的としたのがエリザベス救貧法です。

働ける者と働けない者を厳しく分け、働ける者に関しては扶助から排除するということを行ってきました。

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現代においては、救貧法は完全に廃止され、社会保障に取って代わっています。

イギリスの社会保険の歴史は、1911年に遡ります。

1911年にイギリスは国民保険法を制定し、そこで健康保険と失業保険が導入されることとなりました。

失業保険については、世界で初めての制度でした。

1929年、アメリカで大恐慌が起こりその影響を受けて、イギリスでも失業者が増加し、福祉政策の改革が求められました。

そこで登場するのが、1942年に発表されたベバリッジ報告です。

ベバリッジ報告は、経済学者のウィリアム・ヘンリー・ベバリッジがイギリスの社会保障制度につい作成された報告書です。

社会保障および関連サービスという正式名称であり、チャーチル首相に委託され作成されたものとなっています。

社会保障と国家扶助の2点を掲げたものとなっていて、第一次世界大戦前の制度を改善し、老齢年金や健康保険などをについて全国民を平等に対象とした制度となるよう求めました。

この報告書は、広く世間に知られている「ゆりかごから墓場まで」というイギリスの社会保障制度を指す言葉が使われたものとなっています。

「ゆりかごから墓場まで」とは、生まれてから死亡するまで、全国民の最低限の生活を国家が保障し、生活不安を解消することを指しています。

しかし、戦後のイギリスの経済は、欧米諸国と比較して低調になっていました。

第二次世界大戦後のイギリスの経済停滞は「イギリス病」と呼ばれています。

社会保障制度が充実し、完全雇用が成立したことによって労働力が足りなくなったことが発端とされています。

賃上げ要求によって企業の財政も影響を受け、物価上昇により再びの賃上げ要求と負の循環が連続した結果経済停滞が発生しました。

1979年に首相となったサッチャーの行った政策によって、経済成長率は上昇しましたが、1989年にインフレやポンド安などが再び発生しています。

サッチャー辞任後の次の首相であるメージャーの政権でも世界同時不況の影響を大きく受け続けることとなりました。

サッチャー政権、メージャー政権の双方で、社会保障制度は改革の対象となっています。

改革の目的としては、社会保障に対する公的支出を削減するということが主なものとして挙げられます。

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イギリスの年金制度

イギリスの年金制度は、年金を軸として、失業保険や業務上の災害などに関係する給付を取りまとめている「国民保険」と呼ばれる制度の中で運営されています。

イギリスの年金制度は、つい最近まで基礎年金の上に国家第二年金の重なった二階建ての構造となっていました。

まずは従来の制度を説明した後に、変化があった箇所について説明していきたいと思います。

1階部分にあたる基礎年金は被用者および自営業者を対象としており、2階部分の国家第二年金は被用者(会社に雇われている人)が加入対象となっています。

それぞれの年金に関して、より詳細に説明していきたいと思います。

基礎年金

基礎年金の対象者は全国民ですが、強制加入の対象か、任意加入かの対象に大別されます。

強制加入対象者となるのは、一定所得以上の一般国民となっています。

被用者と自営業者が該当し、被用者は民間のサラリーマンや、パート労働者の一部、そして公務員を含んでいます。

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2015年末時点で設定されている所得の基準は、被用者が週112ポンド以上、自営業者が年5824ポンドとされています。

強制加入の対象外となるのは、無業者、最低所得額に満たない者(学生、主婦、一部パート労働者等)です。

この層については、基礎年金に任意加入することが可能となっています。

国家第二年金

こちらは、先程説明した基礎年金加入者が原則として加入する2階部分の年金となっています。

ただし、定められている条件を満たした職域年金、もしくは個人年金に加入することで国家第二年金の適用除外となり、私的年金に加入することもできます。

イギリスの年金の支給開始年齢

イギリスにおける年金の支給開始年齢は、2018年の時点で男女ともに65歳となっていますが、将来的な引き上げが決定しています。

具体的には、2020年までに男女ともに66歳に、そして2026年から2028年の間で67歳に、2044年から2046年にかけて68歳と予定されています。

年金支給開始年齢の上昇に伴い、2011年の4月以降定年制が廃止されています。

従来は65歳未満に定年を定めることが禁止されていましたが、この改正によって、65歳以上の場合に関しても定年を設置することが禁止されました。

退職する年齢と平均寿命の差が大きくなるということは、公的年金の受給する期間が増大し、結果として社会保障の負担が増加するという問題を孕んでいます。

そのため前述したような改正が行われたわけですが、他にもイギリスは様々な取り組みを行っています。

その1つが「ニューディール50プラス」と呼ばれる制度になります。

この制度は失業者を対象としている「ニューディール25プラス」と呼ばれる制度の対象者を拡大したものであり、50歳以上で求職中の者に、アドバイザーがマンツーマンで対応してくれる制度となっています。

例えば履歴書の書き方であるとか、訓練・試用機会の提供といったことを行います。

求職者手当や所得補助といった全4種の制度のうちのいずれか1つを半年以上受けている場合、ニューディール50プラスには自由に参加することが可能となっています。

イギリスの年金支給額と保険料率

続いて、年金の支給額についての説明です。

2015年度の基礎年金の支給額は、満額で週に115.95ポンドとなっています。

満額を受け取るためには、男女ともに30年以上年金に加入している必要があります。

もしも加入期間が30年未満である場合は、足りない期間に応じて年金の給付が減少することとなっています。

また、2007年に改正された年金法によって、2010年以降年金を受給する資格を得るための最低加入期間が大きく短縮され、1年以上加入した者が受給資格を得られることとなりました。

公的年金の給付水準を考える際に使用される指標の1つが、所得代替率と呼ばれるものになっています。

所得代替率とは、年金の受給が始まる年齢となった際の年金額が、現役世代の手取りの収入と比較してどの程度の割合なのかを示すものです。

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所得代替率が70%であった場合、受け取ることが可能な年金額はその時点での現役世代の手取り収入の70%ということです。

イギリスの公的年金の所得代替率は、2017年のOECDのデータによれば22.1となっています。

同じ参照元のデータによれば、アメリカが38.3、ドイツ38.2、フランス60.5、オランダ28.7、(日本34.6)と、他の欧米諸国と比較しても低い水準となっています。

公的年金の保険料率は、被用者と自営業者で異なります。

まず被用者の保険料率ですが、この保険料は、被用者と使用者(被用者を雇っている者)で分担して支払うこととなっています。

その支払割合は、被用者の所得によって異なっています。

まず被用者の所得が週155ポンドから815ポンドの間である場合は、被用者の負担割合が12.0%、使用者の負担が13.8%で、合計25.8%となります。

被用者の所得が815ポンドを超える場合には、被用者が2%、使用者は13.8%、合計15.8%となります。

また、被用者の所得が週112ポンドから155ポンドである場合には、保険料率は0%となります。

続いて、自営業者の保険料率です。

この保険料は週に2.8ポンドと定められています。

ただし、年間の純利益が5965ポンド未満の場合、保険料を納める義務はなくなります。

また、年間の純利益が8060ポンド以上の場合はまた別に保険料率が定められています。

年間純利益が8060ポンドから42385ポンドの自営業者は9%、42385ポンド以上の場合は、超過した利益の2%の保険料を納める必要があります。

最低所得額以下の任意加入者については、週に14.1ポンドと定められています。

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イギリスの一層型年金

イギリスの年金制度は、基礎年金の上に国家第二年金の乗った、二階建ての制度で実施されていましたが、2016年にその二つが統合され、一層型年金へと変化しました。

制度が統合された理由としては、従来の公的年金制度が複雑であるために、受給額の把握が困難となっていたこと、年金受給世代の多くが公的扶助に頼り切りになっているという状況、性差や雇用形態の差による年金格差の存在などを挙げることができます。

統合しても、被用者の負担する保険料には変化はありません。

これにより所得再分配の機能が上昇するとみられます。

所得再分配とは、大まかに説明すると富裕層から貧困層へと所得を回すことを指します。

それにより機会の均等を狙うものであり、一層型年金は、所得と保険料の負担には比例関係が存在する一方で、給付に関しては一定となるために、所得再分配の機能が向上するのです。

一層型年金へと制度が移行するにあたって、様々な点の変更がなされました。ここからはその変更点について説明していきたいと思います。

年金クレジット

この制度に関しては、貯蓄クレジットが無くなることとなりました。

年金クレジットとは、高齢者のうち低所得者層に向けた給付のことで、2003年に導入された制度となります。

位置づけとしては年金生活者の貧困問題に対応するための補足的な給付となっていますが、存在意義としてはこの年金クレジットを受給する者が貯蓄をするように促すための誘因となるようにといったこともあります。

2003年にこの制度が導入されるまでも、最低生活を保障できるような給付は存在していましたが、年金クレジットでは受給基準がより拡大されています。

この制度が誕生した時点においては、保障クレジットと、前述した貯蓄クレジットの2つが存在していました。

保障クレジットは、60歳以上の者が対象となっています。

受給資格を有する者の条件としては、所得が週で114.05ポンド(単身の場合。夫婦の場合は174.05ポンド)より少ないこととなっています。

貯蓄クレジットは65歳以上の者と対象としていました。

そして、資産についても当初は制限(6000ポンドを超える場合は、超過した部分について500ポンドごとに1ポンドの収入が存在するとみなされた)が設けられていましたが、2016年の改正によりこの資産制限は撤廃されました。

実際に給付される額は、受給資格の条件内における、条件額と所得の差となっています。

つまり、所得が多いほど給付額が減少する取り決めになっているということです。

貯蓄クレジット

保障クレジットというシステムは、先程説明した通り所得が多いほど給付が減少するため、貯蓄インセンティブの減少が危惧されます。

貯蓄クレジットは、保障クレジットにより生じる影響を鑑みて導入されたものとなります。

支給資格を得るための条件としては、まず65歳以上である必要があります。

そして、所得が週84.25ポンド以上159ポンド未満の者(単身者の場合であり、夫婦で134.75ポンド以上233ポンド未満)も受給するための条件として設定されていました。

年金クレジットの導入は効果を上げ、イギリスの高齢者の貧困率は冒頭でも述べた通り低下しました。

受給資格の大幅な緩和により、同制度の今後の持続的な存続・安定性などが不安視する見方もありますが、受給資格が拡大したからと言って、その全ての人がこの制度を利用しているというわけではありません。

受給資格を得ている者のうちおよそ3分の1程度の人々は申請を行っていません。

その理由の1つとしては、この制度を利用することで貧困であるということのスティグマ(烙印)を感じるといった葛藤や悩みが挙げられます。

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公的扶助に対するこのような考え方はイギリスだけの話ではありませんが、いずれにしてもそのような理由で申請を行っていない人がいるという現状となっています。

加えて、一層型年金へと制度がシフトしたことによって、受給者の割合が減少するという見方も示されています。

どういうことかと言いますと、年金クレジットによる最低所得保障の基準と比べて、新しい制度である一層型年金の給付のほうが受けられる給付の水準が高いのです。

そのため年金クレジットに依存する人の割合が低下するという見通しが立っているのです。

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イギリスの私的年金制度

ここまでは公的年金の説明をしてきましたが、ここから私的年金制度の説明へ移ります。

職域年金

職域年金の加入対象者は民間の被用者、そして公務員となります。

加入は強制ではなく任意となります。

運用形態によって、確定給付型、確定拠出型、その2つを組み合わせたハイブリッド型が存在しています。

確定給付型の年金は給付額を先に設定して企業側が運用し、最初に決定した額が加入者へと支払われる流れになっています。

それに対して確定拠出年金は、拠出する額を決めておき加入者が運用を行います。

それによって将来の支給額が決定するため、支給額がどうなるかは確定していません。

イギリスの職域年金についてはその多くが確定給付型のものとなっていますが、近年では、確定拠出型の年金も増えてきています。

2002年には職域年金の改革が行われ、年金委員会と年金保護基金の設置が提言されました。

目的としては、企業年金に加入する者、そして受給する者に対しての年金保護に加えて、事業主の負担軽減をすることによって被用者に職域年金が提供されやすい土壌を作ることとなっています。

安全性向上や、加入者の保護のために2004年には年金保護基金が創設、2005年には年金監察庁が設置されています。

年金を支払わず企業を解散させるといった、加入者・受給者にとって不利なことが発生しないような取り決めがなされています。

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ステークホルダー年金

前述した職域年金は、公的年金を補助するような制度として運用されています。

しかし、景気後退に伴う福利厚生の縮小などの理由によって職域年金の加入者が減少するという事態になっています。

中小企業のそのため加入のインセンティブを高めるように設置されたのがステークホルダー年金となります。

ステークホルダー年金は確定拠出型の年金であり、2001年より実施されています。

職域年金と差別化している点としては中所得者に加入しやすいような仕組みとなっているということが挙げられます。

納める保険料が少なくても比較的手厚い給付が受けられる仕組みになっています。

掛金は税制上の所得控除となる他、償還された分は同年金の積立金に入金される仕組みとなっています。

その他の特徴としては、運用手数料が1.5%以下となるよう定められていることや、ステークホルダー年金を他の年金に移管しても追加手数料を納める必要がないといったことが挙げられます。

イギリスの年金制度まとめ

イギリスは欧米諸国と比較して、割合高齢化のスピードが早い傾向にあります。

そのイギリスにおいては高齢化やその他の要因により生じる影響を的確に分析し対応してきています。

一層型年金への移行という改革によって、公的年金の財政負担を抑えようとしており、事実支出割合の増加が抑えられているという結果を出しています。

持続可能な年金制度を模索するイギリスの年金制度に関して、我が国も学ぶ点が多くあると思われます。

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イギリスの健康保険

イギリスの健康保険、つまり医療保険制度は、国民保健サービスにより提供されています。

国民保健サービスが開始したのは1948年のこととなります。

対象となるのは全ての国民であり、財源は税金、医療サービスを原則的に無料で提供するという仕組みになっています。

日本の制度とは異なっている箇所が多く存在するため、ここからは日本の制度と比較しながらイギリスの医療制度に関して説明していきたいと思います。

日本においては、任意の病院を受診することが可能ですが、イギリスではかかりつけの診療所を登録する必要があります。

軽い症状で、治療もその診療所で可能である場合はそこで医療サービスを受け、より高度な医療サービスが必要となる場合には病院を紹介されるという仕組みになっています。

かかりつけの診療所が決まっているため、軽い症状である者が大きな病院で医療サービスを受けることが無く、住み分けがなされています。

登録してあるかかりつけの診療所はいつでも変更することができるようになっています。

健康保険の患者負担

日本においては医療サービスを受ける際には、患者が一定の割合を負担することと定められています。

例えば、70歳未満の者が3割、70歳から75歳までは年収によって2割と3割、75歳以上の者が1割といった具合です。

対してイギリスでは、前述したように患者の負担は原則として無く、基本的に無料で医療サービスを受けることが可能となっています。

かかりつけの診療所で病院を紹介され、そちらで医療サービスを受けた際も無料となります。

原則として無料、と述べたのは薬剤の処方については1件あたり7.65ポンドの負担が存在するためです。

とはいえ、この負担に関しても、60歳以上や低所得者層などは免除されているため、患者の負担は極力少ないように決まっているということがわかるかと思います。

医療保険の財源

日本においては主に社会保険料によって賄われていますが、イギリスは税金による収入が大部分を占めており、80%以上となっています。

その他に、国民保険から拠出されるぶんが18%ほど、患者の負担が1%程度となっています。

国民保健サービスによる医療の改革は非常に大きく、多岐に渡っています。そのうちの主要なものについて、紹介していきたいと思います。

まずは地域密着型の医療サービスです。

前述したように、国民保健サービスは税収により運営が行われています。

そのため地域という広いレベルでの管理・提供が大切になってきます。

予算管理は従来、地方保健当局が軸となり行われてきましたが、2003年に労働党の改革によって体制に変化が現れました。

地域の医療従事者代表が参加している公営企業のPCTが地域保健サービスを提供する環境を整えたことによって、地方保健当局は戦略的な計画の方針を定め処置を決定するほか、PCT等の監督といった業務に特化することとなったのです。

次に施設設備やマンパワーの拡張です。

民間のノウハウによってコスト削減に繋がり質の高いサービスが提供可能とされているPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ:民間資本主導)方式を含む病院の整備や、民間セクターへの活用などが進められました。

1997年から10年間首相を務めたブレアの政権下では、国民保健サービスの供給能力を短期間で上昇させるためにPFIに着目しました。

前述したように民間のノウハウを用いることによって効率が上がり、同時にリスクも民間が負うこととなるため政府からするとメリットが大きかったとされています。

ただし、想定していた運営がなされない場合に債務問題を揺り起こすといった課題が指摘されており、現在ではネガティブな評価が多くなっているようです。

マンパワーに関しては医師や看護師などに関して、期限を設けた採用が実施されました。

国民保健サービス職員の労働契約に関しては賃金水準の引き上げや、成果主義の導入といった改善が行われています。

続いて、医療サービスの質の向上と地域間の格差是正です。

この課題については、どのようなサービスの提供方法やあり方が必要であるのかということが分野別に定められ、国立優良診療研究所によって各医療サービス、薬剤などの適用に関する評価が行われています。

さらに目標の達成の程度を評価、改善を実施するためのモニター機能もあり、情報が開示されているため運営改善の参考となっています。

その他、5000万人もの患者の情報を管理、共有するシステム作りなどを含むITプロジェクトが進んでいましたが、投じた費用に見合うだけの成果が得られなかったために今のシステムを維持しつつコスト削減を行うことになりました。

そして、患者の選択です。

ここまででも説明してきましたが、イギリスの医療保険の制度ではかかりつけの病院を登録するという方式になっています。

医療サービスが原則として無料という大きなメリットを持つこの制度ですが、かかりつけ診療所の紹介がなければ病院で受診することができないという、患者の選択が制限されるデメリットが存在しています。

この課題に関しては、例えば病院を紹介、予約するにあたっていくつかの日時を提示するとか、定められた期間を超過した場合には病院での受け入れを認めるといった施策が進められています。

先程少し説明したITプロジェクトの中には、オンライン予約システム:Choose & Bookと呼ばれるものが存在しています。

これは、外来予約の必要な患者が、かかりつけの診療所で紹介された病院を選択して、都合の良い日を予約することができるというものになります。

この導入は2005年以降進められていましたが、2015年にNHS電子紹介サービスに取って代わることとなりました。

NHS電子紹介サービスの仕組みとしてはおおむねChoose & Bookのシステムと似ており、かかりつけの診療所から二次医療へと移行する際に、患者が予約の日付と時刻を選択することが可能なシステムとなります。

さて、ここまでイギリスの医療制度について説明してきましたが、もう1つ大きな特徴を有しています。

それは、一次医療(かかりつけの診療所にあたるもの)、二次医療(一医療で紹介される病院)の双方に競争原理が組み込まれているということです。

GP:総合診療医を主とする一次医療においては、成果報酬を設けることによって競争が起こるかたちとなっています。

次に病院が主となる二次医療ですが、こちらについては総合診療医の参加するCCGsによって、医療サービスの質、そして価格について比較されることとなっています。

これにより競争意識が高まるというわけです。

また、一次医療と二次医療を、公的な第三者機関が監督・評価することによって医療制度全体の競争環境の土壌を構築しています。

イギリスの医療保険まとめ

イギリスの医療保険制度は国民保健サービスにより運用されており、財源は税収であるため保険料を納める必要なく、原則として無料で医療サービスが受けられるという、日本とは全く違った制度体系になっています。

様々な課題に対応すべく、国民保健サービスは数多くの変遷を遂げてきました。今後も時代の変化に順応できるか、注目されるところです。

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