アメリカの社会保障の老後の年金制度と健康保険の仕組みとは?

アメリカ

世界の中でも多大な影響力を持つ大国、アメリカですがその社会保障や老後の事情となると詳しく知らない人が多いのではないでしょうか。

今回は、アメリカの社会保障制度の仕組みの中の年金制度と医療保険(健康保険)の制度についてご紹介したいと思います。

アメリカの高齢化事情

アメリカの年金制度についてご紹介する前に、アメリカの高齢者の事情の説明から始めたいと思います。

アメリカの高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口の割合)は、2015年時点で14.6%となっています。

この数値が7%以上で高齢化社会、14%以上で高齢社会とされているため、アメリカはすでに高齢社会に突入しています。

高齢化率が7%から14%に到達するまでの年数を倍加年数と呼びます。

アメリカの倍加年数は72年で、これはフランスの115年、スウェーデンの85年と比べると短い年数ですが、日本の24年と韓国の18年と比較するとかなり長い年数で到達していることがわかります。

高齢化率の上昇速度に関しては、イギリスやドイツと比較しても緩やかになっています。

次に、ジニ係数による比較です。

ジニ係数は所得格差の度合いを示す数値です。

1に近いほど所得格差が大きいということを指します。

以下、OECDデータベースの2015年のデータを引用します。

ただしオーストラリア、ハンガリー、メキシコ、ニュージーランドの4か国に関しては当該年のデータがないため、それを除いた32ヶ国のデータで比較をしていることをご了承ください。

以後、OECD諸国32ヶ国と表記した場合はこのことを指します。

また、今から示すジニ係数は65歳以上の人に限定したものとなっています。

OECDのデータによれば、所得移転前のジニ係数の値は0.677となっています。

これはOECD諸国32ヶ国の中で12番目に高い数値です。

OECD諸国32ヶ国の平均値は0.710であり、ほぼ平均値あたりの水準であるということがわかります。

それでは所得移転後のジニ係数を見てみましょう。

アメリカは0.397で、OECD諸国32ヶ国の中で2番目に高い数値となっています。

ちなみに最も悪いのはチリの0.436です。

また、OECD諸国32ヶ国の平均値が0.293であることから比較してもかなり数値が大きいということがわかるかと思います。

所得移転前の数値が高くても、所得移転後のジニ係数が下がっていれば所得の移転はしっかりとなされているといえます。

アメリカに関しては、所得移転前の数値は国際的に見ても平均値付近の水準で、所得移転後の数値はそれよりも0.28小さくなっています。

所得の移転がなされていないわけではありませんが、他の国々と比べるとその度合いは小さいことがわかります。

また、絶対値で見た場合の所得移転後のジニ係数も高い水準であることから、OECD諸国の中においては、高齢者の所得格差が大きいことを示しているとみてよいでしょう。

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次に、貧困率を見てみましょう。

OECDデータベースより、66歳以上の人に絞った貧困率のデータを得て評価します。

アメリカの2017年の貧困率は22.9%です。

これはOECD36ヶ国中30位とかなり低い水準になっています。

アメリカよりも貧困率が高い国は、オーストラリア(23.2%)、リトアニア(25.1%)、メキシコ(25.6%)、ラトビア(32.7%)、エストニア(35.7%)、韓国(45.7%)の6ヶ国です。

OECD諸国の平均値は13.5%であり、この値と比べても貧困率は結構高いということがわかります。

次はアメリカの高齢者の労働者参加率です。

2017年のデータで、アメリカの65歳以上の労働参加率は19.3%となっています。

これはOECD諸国の中で8番目に高い数値となっています。

OECD諸国の平均値は14.8%であり、それよりも大きいことがわかります。

続いて高齢者の生活に目を向けてみます。

65歳以上の人の平均年間所得の中央値は2010年時点で2万5757ドルとなっています。

(※中央値:平均値とは異なります。上記の場合、平均年間所得の小さい順から大きい順に並べた際に中央に位置する値を指します。年間所得を比較する際に、平均値で求めようとすると突出して高い値があった場合に、実態とは大きく違った値が出てしまうことがあります。中央値の場合は突出したデータの影響が少なく実態を反映した数値として評価することができます)

そして、1万ドル未満の者が約13%、5万ドル以上の者が約25%というデータになっています。

2008年のそれぞれのデータは13%、23%であり、1万ドル未満に関しては同じですが5万ドル以上の者は増加しています。

ここまで示したように、アメリカの高齢者の所得格差は大きい部類で、貧困率も高い傾向にあること、そして現役引退後も労働をしていることがわかります。

それでは、その高齢者をサポートする年金制度はどのような仕組みになっているのでしょうか。

アメリカの年金制度

アメリカの年金制度はOASDI(Old-Age, Survivors, and Disability Insurance)と呼ばれる老齢・遺族・障害保険です。

OASDIは確定給付・賦課方式を取っています。

年金の加入対象になっているのは、被用者(会社に雇われている人)および一定額以上の年収である自営業者です。

また、支給対象者となるためには社会保険料を10年以上納める必要があります。

2011年時点での加入者数は約1億5800万人です。

そして老齢・遺族・障害年金の受給者合計は約5500万人となっています。

歳出は総額7兆3600億ドル、歳入はおよそ8兆ドルです。

社会保険料は内国歳入庁が徴収を行い、年金の給付は社会保障庁が行っています。

これは連保政府が直接管理を行っている事業となります。

その他、失業保険や社会福祉サービスなどの事業は、州政府が行うこととなっています。

年金の特徴

アメリカの公的年金の特徴として挙げられるのは、一階建てである制度という点です。

被用者は、収入の多さに関係なく保険料が賦課されます。

また、自営業者は年間所得400ドル以上が条件となっています。

任意加入制度はありません。

保険料率は、被用者と自営業者ともに、所得の12.4%となっています。

被用者に関しては労働者と使用者でこの保険料を折半すること(6.2%ずつ)が決められています。

また、国庫からの負担は原則としてありません。

老齢年金の給付額を算出する式は、2015年時点で次のようになっています。

基本年金(PIA)=0.9A+0.32B+0.15C

退職年金の受給者に被扶養配偶者がいる場合、退職時における被保険者の基本年金の50%が「家族年金」として支給されます。

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受給開始年齢

退職年金の受給開始年齢は65歳と設定されていますが、現在、段階的に受給開始年齢の引き上げを行っています。

1937年までに生まれた人の受給開始年齢が65歳で、翌年以降、1年ごとに受給開始年齢を2ヶ月ずつ繰り上げることになっています

1960年以降に生まれた場合、一律で受給開始年齢は67歳と定められています。

また、2000年の法改正で変わった点があります。

それは、高齢者が受給開始年齢に達しても働き続けた場合の取り決めで、収入の多寡にかかわらず定められた支給開始年齢に到達した時点で年金の給付が始まることとなりました。

退職年金と、前述した家族年金は62歳まで繰り上げることが可能です。ただし、毎月45時間未満の就労であるという条件が付けられています。

繰り上げた場合は、その後一定率の減額がなされ給付されます。

その逆に、受給開始年齢を遅らせることもでき、そうした際には一定率の増額がなされ給付されることになっています。

次に、アメリカの2011年時点での年金の給付額を見てみましょう。老齢年金については男性が1381ドル(約10万8千円)、女性が1072ドルです。

障害年金は、男性が1237ドル、女性が972ドルです。

これがどの程度の金額か、日本の厚生年金保険と比較してみましょう。

月の平均給付額は、2010年時点で男性が17万1千円、女性が10万4千円です。

OASDIの男性の老齢年金の給付額と日本の女性の厚生年金保険とがほぼ同じ水準ということがわかります。

このように、アメリカの公的年金制度の支給額は少ない水準であり、早期退職をしようと考えている者は企業年金の資金等が必要になると言えます。

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公的年金の課題

OASDIの課題は財政問題です。

毎年発表されている信託基金報告(Trustee Report)には年間報告に加えて今後75年間の見通しが載せられています。

Trustee Report 2018では、次のような発表がなされています。

社会保障とメディケア(健康保険の箇所で詳しく述べるが、公的な医療保障の制度の1つのことを指します)を合わせて、合衆国の支出予定の42%を占めることがわかりました。

その結果として、信託基金の残高があっても、メディケアの補完医療保険(SMI)の基金への統一予算への圧力は高まります。

OASDIの信託基金の積立金は2034年に枯渇する見通しであることが明らかになりました。

OASDIの積立金は2018年に減少すると予測されています。

理由としては、総費用が総収入を超えるためです。

※総費用:1兆3000億ドル 総収入:1兆1000億ドル

この原因として、ベビーブームが大きく影響しています。

アメリカは第二次世界大戦後の1946年~1964年の18年間の間、ベビーブームがありました。

このベビーブームに生まれた人がOASDIの受給開始年齢の66歳になるのは、2012年です。

ベビーブームの世代が退職するにしたがって、受給者の数は急激に増加します。

それに伴い積立金を崩していくことになります。

財政問題は将来世代の給付に関わる重大な問題であり、対策が求められます。

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私的年金制度

前述したように、アメリカのOASDIより給付される額がそれほど多くないというのが現状です。

そのため、所得がある程度ある人は自発的に資産を作れるように動いています。

アメリカの私的年金には、個人退職勘定(individual Retirement Accounts:IRA)と呼ばれる制度が存在します。

この制度は1974年に作られ、今日まで様々な変更が行われてきました。

IRAは退職後の老後の資金生成を担っている存在です。

これが創設された目的としては、アメリカの国民の自発的な行動で資産を作り出すことです。

企業の年金等のサポートがない自営業者であるとか、規模の小さい事業所で働く者へ貯蓄プラットフォームを提供し貯蓄を促すことと、401(k)プラン(アメリカの確定拠出年金制度の1つで、主に従業員の給与からの拠出ですが、企業側もそれに上乗せをして拠出できる制度となっています)の口座を所有している人の転職時の引受先の提供も目的とされています。

IRAが発足した当時は、トラディショナルIRAと呼ばれた種類しか存在していませんでした。

年間の拠出限度額は、年間非課税拠出枠1500ドル、もしくは所得の15%のうち少ないほうとされていました。

その後何度か新しい制度が導入されたほか、様々な変更が行われてきました。

現行の制度のうち、トラディショナルIRAと呼ばれる制度と、ロスIRAと呼ばれる制度について紹介したいと思います。

トラディショナルIRAは、1974年に創設されました。

労働者個人が資金を拠出するもので、拠出した額が所得から控除される仕組みとなっています。

対象者は、70.5歳未満の者で課税可能な報酬のある個人となっています。

報酬は、賃金、給料、扶養料などが例として挙げられます。

これに該当しない所得のみでは口座開設はできません。

拠出できる金額は、当該年の報酬額と拠出限度額のうち小さい方と定められています。

また、50歳以上の人は1000ドルの追加拠出を行うことができ、共同で税務申告をしている夫婦においては、合計報酬額と、2人の拠出限度額の合計のうち小さい方まで資金を拠出できるように定められています。

ロスIRAは、1997年に創設されたものでトラディショナルIRAと差別化されています。

運用時が非課税である点はトラディショナルIRAと同じですが、拠出時は課税で、給付時は非課税という点は異なっています。

加えて、70.5歳以上でも資金を拠出することができる点、一定の年齢に達しても分配の開始が強制されない等の違いもあります。

一定以上の所得の者は口座を開設することができないため、所得が高い者のみが制度上有利になることがないようになっています。

ロスIRA創設にあたっては、税制優遇の措置が取られる拠出資金を一定期間保有、引き出す際は非課税という仕組みが可能になればより個人の貯蓄ニーズに合ったものになること、住宅購入のための資金を準備するのが難しい多数のアメリカ国民に貯蓄を促すことが適切である点などが必要事項として挙がりました。

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IRAの厳しい引き出し基準

IRAに関しては、厳しい引き出しの基準が定められています。

その理由としては、前述したような税金に関する優遇措置があるためです。

例えばトラディショナルIRAにおいては、口座から資産の引き出しを行うと、その額がその年における所得金額に足され、所得税の課税対象となります。

また、59.5歳以前の引き出しを行った場合ペナルティとして10%の課税が行われます。

ただし、完全かつ永遠に身体に障害を負っている場合や、分配額が失業期間における医療保険額以下である場合など一定の基準に該当する場合は例外となっています。

ロスIRAに関しては、資産を引き出すパターンは3種類存在しています。

1つ目が拠出額の払い戻しです。

これは当該年の拠出資金をその年のうちに口座から引き出すことを指します。

これに関しては早期分配の追加税は課されません。

2つ目は適格分配です。

ロスIRAに資金の拠出がなされて以降5年経過後に行われた分配であるか、分配に関しての支払いが基準に則っていれば成立します。

こちらも早期分配の10%追加税は課されません。

3つ目は非適格分配です。

これは先述した二つの引き出し方法に該当しないものを指します。

これに関しては、分配した額のうち決められた分を総所得額に加算しなければなりません。

また、早期分配の追加税が10%付加されます。

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まとめ:アメリカの年金制度に関して

アメリカの年金制度は、高齢化や経済影響に伴い、公的年金を主とした制度から、公的年金と私的年金を組み合わせたかたちへと変化してきています。

このような形態はアメリカが世界の先頭となり進んでいます。

老後の生活の充実のために公的年金制度では足りないぶん、私的年金制度への加入を促しているわけですが、問題点もあります。

現役時代に貧困であった場合老後も貧しい生活を余儀なくされているというのが現状です。

年金制度において先進的な制度を運用しているアメリカですが、これらの課題をどうクリアしていくかが注目されるといえるでしょう。

続いて、健康保険の説明に移ります。

アメリカの健康保険

アメリカには、政府は原則とし個人の生活に干渉しないという自己責任の精神と、州権尊重が社会保障制度に大きな影響を与えています。

アメリカは日本と異なって国民皆保険制度はありません

公的な医療保障の制度としては主に2つあり、受給資格のある者だけが加入できるシステムとなっています。

メディケアとメディケイドは、連王政府の支出のうち約24%(2014年時点)と、大きな割合を占めています。

それではその2つの制度を紹介していきたいと思います。

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メディケア

1つ目がメディケア(Medicare)と呼ばれる制度で、1965年に創設されました。

連邦政府が運営しており、65歳以上の高齢者、障害年金の受給者、透析や移植の必要な腎臓病患者等が対象になっています。

2010年の時点では約4710万人が加入しています。

メディケアにはパートAからパートDの4種類の保険が存在していますが、基本的なプランはパートAとパートBになります。

パートAは強制加入の保険で、入院時の費用が給付されます。

財源は現役の労働者の納めている保険料となっていて、加入者が保険料を支払う必要はありません。

現役の労働者は、給与の2.9%を保険料として支払います。

被用者については事業主と折半して納める、自営業者は全額自己負担と定められています。

パートBは医師の診察、外来サービスを保障する任意加入の保険です。

財源は加入者の納める保険料が4分の1程度を占め、残りは連邦政府の一般財源から充てられています。

2011年時点での月の保険料は標準で115.4ドルとなっています。

パートCは民間保険会社の運営によって行われています。

メディケアより認可された民間医療保険会社から給付がなされ、保険料はそれぞれのプランによって異なっています。

パートDは処方薬に対して支給が行われるものです。

財源は、加入者の納める保険料、連邦政府および州政府の公費が充てられています。

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メディケイド

2つ目がメディケイド(Medicaid)です。

こちらは、主に低所得者を対象とした制度で1965年に創設されました。

子供、妊婦、高齢者、障害者等の低所得者に公的な医療扶助を行うことを目的としています。

通常の医療サービスの他、メディケアのサポート外である介護等の長期ケアもカバーしています。

次に、メディケイドがどのように運用されているかを説明したいと思います。

州が医療提供者や、マネージド・ケア機関に費用を支払い、メディケア・メディケイドサービスセンターへと報告、その後連邦政府が定められた割合を州へと払い戻すシステムになっています。

連邦政府がどの程度の割合を負担すべきか、連邦医療補助率と呼ばれる指標により、これは毎年決定されることとなっています。

この指標は、国の平均と比較して一人あたりの所得が低い州にはより多くの補助金を、所得が高い州については少ない補助金を支払うように定められています。

連邦医療補助率の最低ラインは50%で、最高ラインが83%に設定されています。

2014年の時点では連邦政府の支出が3102億ドル、州を合算すると5158億ドルに及び、加入者は約6400万人に達しています。

メディケイドはアメリカの各州において、人口構成や低所得者の比率といったものがそれぞれ違っているため様々な点において州ごとに異なっています。

ただし、加入資格や加入者の負担分、医療給付の内容など連邦によって規則が設けられているものもあります。

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メディケイドの問題点

メディケイドは2010年にオバマケアが制定されたことで、加入するための資格の範囲が拡大されました。

保険に加入していない者を少なくするために、医療保険に関して様々な変更をし、前述のように加入資格を拡大するなど、大きな改革となりました。

そして2014年にはさらに加入資格に関して追加の取り決めがなされました。

メディケアでは原則として65歳未満の者、妊婦でない者などは加入対象ではありませんでしたが、収入が連邦における貧困水準の133%以下であれば加入資格を有することになりました。

加入資格の範囲はこのように拡大しましたが、多くの州がこれについて異議を唱えました。

その理由としては、加入資格が拡大することによって州の財政負担が大きくなると考えられるからです。

この件に関しては2012年に裁判が行われ、結果としては新規にメディケイドに加入した者については最初の3年間、州の支出のうち100%を連邦政府が負担することが定められました。

それ以降は連邦政府の負担分を徐々に減少させて、2020年から先については最低90%を負担することが定められ、州の負担を軽減する形態へと落ち着きました。

メディケイドの支出額は、年々増加の一途を辿っています。

GDPに占めるメディケイドの支出(連邦政府と州の合算)は、1970年の時点では0.5%でしたが2012年には2.7%にまで増加しています。

この割合は今後も増加していく見通しとなっています。

支出が増加する理由としては、前述したオバマケアの制定によって加入資格の範囲が増加し加入者が増えたことに加えて、加入者一人当たりに使われる費用が、一人当たりのGDPと比較して増加していることも要因となっています。

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さらに、公的な医療保険と民間医療保険の双方において医療保険費用が増加しているのも現状です。

加入者が増加したことのみが原因ではなく、医療費の高騰や高額医療の増加等、経済の成長と比較して医療保険の伸びが急激なものとなっています。

メディケイドの利点として挙げられるのが、他の医療保険と比較して比較的コストを抑えて、低所得者に医療保険を行きわたらせることが可能な点です。

これは、メディケイドにおいて医療提供者への支払率、そして医療内容が低いためですが、前述のように加入者枠の拡大によって今後も加入者が増加することは確実であると考えられます。

すると他の医療保険と比較して低コストとはいえ、連邦政府や州の支出が増えることは間違いないといえるでしょう。

これまで述べてきたように、アメリカには日本のように全国民を対象とする健康保険制度は存在しません(公的な医療保険としてメディケアとメディケイドといった制度がありますが)。

そのため民間医療保険への加入が多くなっています。

民間保険会社が提供している医療保険で中心的な役割を果たしているのが雇用主提供医療保険と呼ばれるものです。

この保険を民間保険会社から雇用主が購入し、被用者に提供する流れとなっています。

雇用主に医療給付をしなければならないという強制力はありませんが、企業側が優秀な人材を確保し、生産性を向上させるため、アメリカでは伝統的に雇用主が被用者に対して医療給付を提供してきたという背景があります。

被用者の側からしても、医療給付が提供されることによって税制上の優遇措置が受けられるため双方の思惑が合致していたと言えます。

アメリカでは1980年代前半まで、保険料を雇用主が全額負担する場合が多くありました。

その後景気回復に伴い加入者は増加しますが、バブル崩壊を機に加入者は減少に転じました。

その後の景気後退に伴い、医療保障費用を抑えるという需要が高まりました。

それによって雇用主は慰労保険の負担を軽減するような対応を取る必要が生じたのです。

そのため雇用主は被用者に対して費用を転嫁するほか、パートタイムの雇用者等の増加による保険料の拠出削減を行うなど、医療給付費用の削減がなされました。

結果として、これが保険に加入していない無保険者を増加させる要因の一つとなっています。

パートタイムの雇用者や、有期雇用者に対して医療保険を提供する企業はそれほど多くないのが現状です。

さらには、医療保険が提供されている場合においても保険料の額によっては被用者が負担できないこともあるため、発表されている、パートタイムの雇用者や有期雇用者に対して医療保険を提供している企業の割合よりも実際の値はさらに少なくなるとみられます。

アメリカの医療保険の問題:無保険者

アメリカにおいては医療保険に加入していない無保険者が問題になっています。

2012年の時点では、人口比率で15.4%もの人が無保険であるという実態が明らかになっています。

日本と違い全国民を対象とした医療保険の制度がないアメリカ独特の問題と言えますが、様々な要素が絡み合ってこのような問題が生じています。

前述したように、公的な医療保険制度よりも雇用主提供医療保険が中心的役割を果たしているアメリカにおいては、景気悪化に伴い無保険者が増加してしまう環境にあります。

なぜそのような環境になっているのかと言うと、失業した場合、無収入になるのみでなく、医療保険が全て自己負担となるため、高額な保険料を支払うことができず無保険者となってしまうからです。

アメリカにおいては、無保険者は若い世代に特に多く、19歳から34歳の割合が54.4%となっています。

無保険者の増加は深刻な問題です。

病気になった際、必要な医療サービスを受けることができないため重症化するまで医療機関に行かないという傾向があるためです。

重症化した場合の診療費は当然高額になり、それが結果として医療費を上昇させる要因となっているのです。

この問題に対して、州単位で改善に乗り出した例があります。

それが、2006年にマサチューセッツ州が定めた法律です。

州の政府が全ての州民に対して保険に加入すること、また税金ペナルティを設けました。

その他雇用主が行うべき規定や、補助金の制度も合わせて定めました。

実質的な皆保険制度といえる仕組みであり、結果として無保険者は半減しました。

医療費総額に関しては大きな変化は見られませんでしたが、その中身に関しては成果がありました。

アメリカでは救急において受診患者は拒否できないよう法律で定められています。

無保険者はその際の費用を支払うことが困難であり、一般的なケアを使用する場合が多かったのです。

マサチューセッツ州においては改革後、それに関する支出が3分の1減少したことがわかったのです。

マサチューセッツ州の動きを受けて、他の州でも皆保険制度の導入が始まりました。

それらの例をまた参考にして、無保険者の問題は改善に向かうのではないでしょうか。

まとめ:アメリカの健康保険に関して

日本のように全国民を対象にした健康保険制度がないアメリカにおける公的な医療保険にはメディケアやメディケイドといった制度が存在し、これまでに加入資格の拡大の措置が何度か取られてきました。

ただし基本的には民間医療保険の存在が大きく、国民の大半が民間医療保険に加入しています。

アメリカも医療費の高騰という問題に直面していますが、原因は日本のものとは異なり、医療技術が進んだことが要因とされています。

他にも、無保険者という問題も大きく横たわっています。

それの対策に乗り出した州もあり、改善されたという実績もあります。

そのような例を参考にし、アメリカ全体が無保険者の問題を改善する方向へ動いていくことが重要であると言えるでしょう。

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